女子プロ野球の埼玉アストライアが17日、毎年恒例となっている年に一度の神宮球場大会を開催。埼玉アストライア単独の主催試合としては史上最多となる7812人の動員に成功し、京都フローラとの試合にも10−1で勝利した。

 試合は初回に京都のエラー絡みで埼玉が先制に成功すると、2回には京都先発の小西美加を一気に攻めて、マウンドから引きずり降ろした。その後も攻撃の手を緩めない埼玉打線が11安打10打点と大爆発。投げては埼玉のエース、磯崎由加里が6回を投げて1失点と好投し、3位の埼玉と2位京都のゲーム差は「2」となった。


◆ 川端の神宮に懸ける思い

「打ちたかったー!」

 チームは大勝したのにもかかわらず、川端慎吾(ヤクルト)の実妹である埼玉の4番、川端友紀は試合後に悔しがった。この日は怪我で長期離脱中の兄、慎吾が球場で見守る中、川端は初回に一塁内野安打で出塁。2打席目以降も死球、四球、四球と全打席で出塁し勝利に貢献するも、神宮に対して思い入れが強い川端にとって、会心の一撃がなかったことが不満だったようだ。

 しかし、神宮球場に8000人近く動員できたことについては「スタメン発表のときの歓声の凄さには驚いたし嬉しかったですね」と満足気な表情で振り返った。

 先日就任した元オリックスの福留宏紀総合強化コーチは「野手の中では川端が二歩抜けている」と評価。川端は「まあ出塁率が上がったからいいかな。首位打者(現在3位)を目指します」と最後は笑顔で前を向いた。

「打点はとっていましたけど、タイムリーを打ててなかったので良かったです。あの場面は何も考えず、ただシンプルに打とうと。ツーアウトのときはライナーを打つと決めているので。でもきょうはお客さんの歓声が打たせてくれたんだと思います」


◆ “主将”楢岡と“二刀流”小西、それぞれの思い

 試合前は集中するため、女子プロ野球においては珍しく取材にほとんど応じないストイックさを持っている楢岡美和。昨年はリーグトップの45安打、打率.355と、好成績を残した楢岡だが、川端から主将の座を継いだ今年は打率.280前後を行き来するなど苦しんでいる。

 しかし、小西をマウンドから引きずり降ろしたこの日の三塁打は、楢岡らしいパワフルな打球だった。自分が思い描くバッティングには「まだまだ」と話すが、「ファンの皆さんの声援が力になるって言うじゃないですか。まさにそんな感じできょうは楽しかったです」と語る楢岡の瞳は力強さを取り戻していた。

 一方、敗れた京都の先発を務めた女子プロ野球のレジェンド、“二刀流”の小西美加は、「私は尻上がりに乗って行くタイプなので、その前に単打を続けて打たれて、1点を焦ってしまった。きょうは何も出来なかった。ファンの皆さんに申し訳ない」と最後は涙を浮かべながらコメント。「今まで神宮にはいい思いがないのでやり返したい」と雪辱を誓っている。


◆ キャップトスは史上2位

 元巨人の辻内崇伸ヘッドコーチは、「今回は全員で頑張って集客活動をしましたけど、目標の1万人には届かなかった。そこは課題。でも皆さんが楽しい試合が出来たと思う」と今回の集客活動を振り返る。

 辻内ヘッドが話していたように、埼玉は今回の神宮大会の集客目標を1万人に定めて、川端、加藤だけではなく、全選手、監督、コーチ、そしてスタッフが連日に渡り全力プロモーションを繰り広げた。

 昨年に引き続き声優の山寺宏一、そして今年は花江夏樹も加わり新旧おはスタMCが揃い踏みしたほか、最強の地下アイドル『仮面女子』、ニッポン放送ショウアップナイター発のアイドルユニット『有楽町ベンチーズ』、ヤクルトのマスコット『つば九郎』などゲストも多数登場した。

 そして核となる企画として『世界記録に挑戦!目指せ10,000人!埼玉アストライアキャップトスチャレンジ』を開催。キャップトスが行われた3回裏終了の時点での観衆は7,752人だったため、これまでのギネス記録である9,995人には届かなかったが、ギネス認定員として来場したジャスティン氏が、史上2位の記録であることを発表した。


◆ 稲村亜美に戦線布告!?

「本当にいい経験が出来ました。神宮球場でライブをやらせていただいたことに感謝します。女子プロ野球は凄く面白かったです。残り試合も全部観に行きたい。女子プロ野球の公式サポーターをやらせてもらえないですかね?」

 試合後に、埼玉の川端、加藤とともに会見に参加した仮面女子のリーダー、桜のどかと、西武ファンを公言している猪狩ともかは、埼玉の公式サポーターである稲村亜美に戦線布告と言わんばかりに興奮を抑えきれない様子だった。

 これには川端や加藤、そして報道陣からも笑いが起こっていた。加藤は「私がプロに入ってから、コラボマッチ以外でこんなにお客さんが集まったのは初めて。凄く幸せでした。これからも(仮面女子の)皆さんみたいに、初めて女子プロ野球を観に来られた方に全力プレーを見せて、また見たいなと思ってもらいたい」と語り、会見を締めた。


◆ この経験を糧に

 結果的に色々な演出をイニング間に盛り過ぎたため、長時間興行となってしまったが、これは来年の課題にすればいい。女子プロ野球はまだ「まずは見てもらう」という段階だ。

 6.25京セラドーム大阪でのオリックスとのコラボマッチでは初の1万人超えを発表し、今回の神宮には女子プロ野球の力で8000人近くを集めることが出来た。選手はもちろん、女子プロ野球関係者はこの実績を自信に変え、次のステージに進んでもらいたい。


取材・文=どら増田