◆ 得点力で踏みとどまった前半戦

 前半戦を終えて、41勝39敗2分。

 ベイスターズは2007年以来10年ぶりに、貯金がある状態でシーズンを折り返した。

 大型連敗によって下位に沈んでいったジャイアンツやスワローズを尻目に、一度も“3タテ”を食らうことなくAクラスをキープ。勝ちと負けを繰り返しながら5割のライン近辺にとどまり続けられたのは、おしなべて言えば「打」の貢献度が大きかった。


 7月18日終了時点のチーム総失点346は、2試合少ないドラゴンズ(347失点)とほぼ同じで、スワローズ(356失点)に次いで2番目に多い水準だ。

 一方のチーム総得点353は、カープ(447得点)に次いでリーグ2位。失点も多いがそれ以上に点を取る戦いを重ねてきたことが、こうした数字に表れている。

 もう一つ、「打」に関する象徴的なデータがある。

 それは満塁ホームランの数。セ・リーグでここまでに飛び出したグランドスラムは9本あるが、実にそのうちの5本をベイスターズの選手が記録しているのだ。


◆ グランドスラムの影響力

 4月30日のカープ戦、ホセ・ロペスの一発に始まり、梶谷隆幸(5月6日)、宮崎敏郎(6月15日)、戸柱恭孝(6月17日)、桑原将志(7月1日)。打ったのはすべて異なる打者で、いずれの試合もベイスターズが勝利している。

 満塁弾には、一挙に4点が入るということ以上の価値がある。球場のムードやチームを取り巻く空気、試合の流れをがらりと変える力がある。

 5本の中でも特に印象深いのは、いずれも試合終盤に劣勢をはねのける一打となった梶谷と桑原のホームランだろう。

 梶谷は5月6日に行われたスワローズ戦の8回裏、1-5と4点ビハインドの場面で打球をライトスタンドに突き刺した。敗色濃厚の局面からいっきに同点に追いつき、延長11回、柴田竜拓のタイムリーでサヨナラ勝ちをおさめた一戦は、前半戦のベストゲームの一つに挙げられる。

 また桑原は、7月1日のジャイアンツ戦、2-4で迎えた最終回2アウトから劇的な逆転ホームランを東京ドーム左翼席に放り込んだ。敵軍の自力優勝の可能性を消滅させ、自軍に今シーズン初の貯金1をもたらす至高の一振りだった。


◆ 出遅れた主砲を支えた打線

 打つことで活路を切り開いてきたベイスターズにあって、開幕から出遅れたのが筒香嘉智だ。第1号が生まれたのは22試合目の4月27日。それ以降も、なかなか量産体制突入とはいかなかった。

 言い換えれば、筒香の前後を打ってきたロペスや宮崎を筆頭に、他の打者たちが主砲の不振を補って余りある活躍を見せたということだ。打点を荒稼ぎした戸柱に代表されるように、ここぞの勝負強い打撃によって、ベイスターズは大型連敗に陥ることなく堅実に勝ちを重ね、貯金ターンを実現させた。



◆ 打順変更の先に生まれた茨の道

 注目したいのは、ここにきてアレックス・ラミレス監督がスモールベースボールを唱え始めたことだ。

 6月30日から筒香を3番に上げる大胆な策に打って出ると、7月2日の試合以降は、それまで2番を担っていた梶谷を7番に移し、2番にバントのできる選手を起用する打順に変更した。指揮官は、その意図をこう語る。

「スモールベースボールをしたい。筒香が4番にいた時は、2アウト二塁といった場面で打席が回って来ることが多く、その結果、勝負を避けられやすかった。だが3番にしたことで、1アウト二塁といった場面で筒香が打席に立つケースが多くなる。そういう状況をつくっていきたいと考えている」

 梶谷を攻撃的2番打者として起用することは、打ってつなぐ、あわよくば大量得点というスタイルで戦うことを意味する。だがラミレスは、バントによってアウトを1つ消費してでも、より確実に得点が狙える形にシフトチェンジした。

 たしかに「1アウト二塁で打席に筒香」というシチュエーションなら、四球で歩けば走者をためてロペス&宮崎の3割打者につながり、チャンスは大きく広がる。そのため、相手はそれを嫌がって筒香との勝負を選ぶケースが増えるだろう。しかし夏を迎え、主砲もようやく調子を上げてきた。相手にしてみれば、どちらに進んでも茨の道しか用意されていない、危険な打順となっている。


◆ 指揮官の見立てとカギを握る救援陣

 ラミレスは、満塁弾で形勢を逆転してきたような戦い方にばかり依存していては、いつかスランプ、すなわち大きな連敗に陥る可能性が高いと睨んでいるに違いない。「80勝以上で優勝」の目標を現実のものとするためには、「失点が多く、それ以上に得点する野球」ではなく、「失点を最小限にとどめ、確実な加点で接戦を制する野球」が必要になると判断したのだ。

 そのためにはもちろん、「投」の奮起が欠かせない。

 チーム最多タイの6勝を挙げているルーキーの浜口遥大が左肩機能不全のため登録を抹消されたが、代わってジョー・ウィーランドが復帰して、後半戦2試合目でさっそく勝ち星を手にした。安定度を増してきている2年目の今永昇太に加え、石田健大、井納翔一らを擁する先発の陣容は決して悪くない。懸念材料を挙げるなら、不安定さの残る救援陣。今後は競った展開が増えると考えられるだけに、重圧の中でもきっちりと結果を残す精神的なタフさが求められる。

 後半戦最初のカードでは、スワローズを相手に2-1、1-0と接戦をものにして連勝スタートを飾った。先発した今永とウィーランドがしっかりと試合をつくり、第1戦は筒香が、第2戦は梶谷が貴重な得点をたたき出した。

 これで貯金はラミレス政権下で最多の4。“ビッグ”から“スモール”への戦術変更で着実に勝ちを拾っていくことができれば――セ・リーグ上位争いの行方は、まだまだわからない。