◆ 1試合も指揮することなく「解任」

 アメリカ・メジャーリーグのニューヨーク・メッツは現地時間16日(日本時間17日)、今季から監督に就任することが決まっていたカルロス・ベルトラン氏を「解任」することを発表した。

 ベルトラン氏はプエルトリコ出身の42歳。現役時代は走攻守3拍子揃ったスイッチヒッターとして20年に渡り第一線を走り続け、通算2586試合に出場。打率.279(9768−2725)、435本塁打、1587打点に312盗塁と、“生涯トリプルスリー”に迫る成績も残している。

 野球の実力もさることながら、人間としても“超一流”だったことも忘れてはならない。メジャーリーガーを志したのは母国の両親のために大きな家をプレゼントするというのが目標で、デビューから5年目・2002年のオフには早々にその夢を叶えて見せる。

 その後も故郷にスポーツや教育を通じて若者を支援する基金を創設したり、野球アカデミーを開くなどといった活動が認められ、2013年には本業である野球と並行して社会福祉に貢献した選手に贈られる『ロベルト・クレメンテ賞』を受賞。

 近年では、2017年にユリエスキ・グリエルが当時ドジャースのダルビッシュ有に対して人種差別と取られるような行為を働いた際に、両者の間を取り持ったというエピソードも有名だ。


◆ 殿堂入りも有力視されていた人格者が…

 しかし、そんなメジャーを代表するような人格者でも、たった1度の過ちによって輝かしいキャリアに傷がついてしまう。

 昨年11月、念願だったメジャーリーグの監督に就任することが決まり、いよいよ新シーズンへ……という矢先、発覚したアストロズの“サイン盗み”問題。1月に入って日に日に騒動が大きくなり、アメリカ球界全体を揺るがす大問題へと発展していくなか、2017年にアストロズが球団ぐるみで行っていた問題行為にベルトランが大きく関わっていたことが明るみとなり、監督デビューを果たす前に、就任わずか2カ月で「解任」となってしまった。

 問題の2017年といえば、ベルトランにとっての現役最終年。輝かしいキャリアを歩みながら、チャンピオンリングと縁がなかった男が現役最後の年に、通算7度目のポストシーズン出場にして悲願のワールドシリーズ制覇を果たし、プロ野球選手としての人生を華々しく締めくくったシーズンだった。

 順調にいけば2023年にはアメリカ野球殿堂の候補入りも見込まれていただけに、今回のスキャンダルはそんな栄光のすべてを一気に失いかねない大事件。衝撃の余波は今後も続いていきそうだ。