◆ “大台超え”で一躍脚光

 8月17日に幕を閉じた、『2020年甲子園高校野球交流試合』。全国各地で行われた独自大会も全日程を終了し、これからはいよいよドラフト会議へ。プロ志望届を提出した高校生の候補たちも話題となっている。

 10月26日のドラフト会議に向けて、プロアマ野球研究所(PABBlab)では、この夏に活躍が光った選手について積極的に紹介していきたいと思う。

 今回は、東北6県の優勝校が集った東北大会で見事な投球を披露した、青森山田の“150キロ右腕”を取り上げる。


◆ 東北大会で圧倒的な存在感

 夏の甲子園大会が中止となったことで、全国各地で独自大会が行われたこの夏。そんな中、都道府県の枠組みを超えて大会を実施したのが東北だ。

 8月9日から青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島の県大会で優勝した6校が宮城県の石巻市民球場に集い、“東北チャンピオン”を決める戦いが繰り広げられた。

 大会は福島代表の聖光学院が優勝を果たしたが、今年のドラフト候補として圧倒的な存在感を示したのが、青森山田のエース・小牟田龍宝だ。


 小牟田は東京の出身で、中学時代は都内でも有数の強豪チームである東京神宮リトルシニアでプレー。青森山田に進学後も1年夏からマウンドを経験するなど、大きな期待を受けていた。

 実際に旧チームでも、昨秋のドラフトで巨人から1位指名を受けた堀田賢慎とともに2枚看板を形成。昨年春の東北大会では、すでに140キロを超えるスピードもマークしている。

 秋の新チームでは、右肩を痛めたこともあって外野での出場が多かったが、故障が癒えたこの春には最速150キロも計測。

 迎えたこの夏の東北大会では、初日の鶴岡東戦に「3番・投手」で出場。終盤に甘く入ったボールをとらえられて2本のホームランを浴びるなど、結果的には1−4で敗れたものの、9回を一人で投げ抜いて14奪三振を記録。スタンドに詰めかけたスカウト陣に、その実力を存分にアピールしてみせた。


◆ 球速以上に印象的な“必殺スライダー”

 実際にピッチングを見たのは昨年春以来だったが、約1年間でまず変わったのはフォームが大きくなったところだ。

 下級生の頃はどちらかというとまとまりのあるタイプで、腕の振りの鋭さだけが目立っていたが、この夏は全身をフルに使って腕を振るようになっている。

 高校生投手の場合、下半身が使えないことも多いが、小牟田はステップの幅が広く、下半身主導で投げられることが大きい。

 躍動感は確実にアップしつつ、それでいながらも下級生の頃に見せていたまとまりも程よく残しているというのが良い点。イメージとしては、西武時代に抑えを務めていた頃の豊田清と重なった。


 この日のストレートは最速144キロと、自己最速の150キロには及ばなかったが、立ち上がりから終盤までコンスタントに140キロ台をマークしており、そのアベレージの高さは魅力である。

 また、指のかかりが良く、体感的には140キロ台後半に感じるようなボールも少なくなかった。そして、さらなる成長を感じさせたのが変化球だ。

 特に素晴らしかったのが縦のスライダーで、ストレートと同じ軌道から打者の手元で鋭く変化する必殺のボール。これを駆使してたびたび空振りを奪っていた。

 カウントをとるカーブやチェンジアップもしっかりと腕が振れており、時折投げるフォークのブレーキも申し分なかった。140キロ台中盤のストレートにこれだけの変化球を揃えれば、三振の数が多いのもうなずける。


◆ 「青森山田」の校名が呼ばれる可能性は高い

 この日は計4つの四死球を与えたが、そのうちに3つは内角を攻めたすえの死球であり、ボールが先行するような場面も少なかった。9回で14個の三振を奪いながら、球数は126球でまとめているというのも、高い制球力の証拠である。

 試合後、本人もこの日のピッチングは3年間で最も手応えがあったと話しており、甲子園で行われた交流試合でも強打を発揮した鶴岡東を相手に、これだけの三振を奪えたことは大きな自信になったようだ。


 進路についてもプロ志望を表明しているが、その将来性に注目している球団は少なくないはずである。昨年に続いて、「青森山田」の校名がドラフト会議で呼ばれる可能性は高いだろう。


☆記事提供:プロアマ野球研究所