◆ 10シーズンで完投数は3分の1以下に減少

 1月12日、巨人は一軍投手チーフコーチ補佐にOBの桑田真澄氏が就任したことを発表。球界の大きな話題となった。桑田氏は、通算173勝を誇るいわずとしれた巨人のレジェンドのひとり。野球解説者・野球評論家としては、「投手の故障を防ぐため、投球数は制限すべき」という主張を幾度となく繰り返してきたことでも知られる。

 その桑田氏は、1月16日深夜のテレビ番組に出演。「先発投手には完投を求める」という趣旨の発言をした。身体の成長過程にある学生までの投手に対しては投球数を制限すべきだが、身体ができているプロはちがうというわけだ。

 野球ファンはよく知るところだが、投手の分業制が進んでいる近年は、完投の数は減少の一途をたどっている。ここで、直近10シーズンにおけるNPB全体の完投数を振り返ってみたい。

【NPB全体の完投数の推移】※直近10シーズン
2011年 168完投
2012年 131完投
2013年 105完投
2014年 100完投
2015年  95完投
2016年  93完投
2017年  91完投
2018年  85完投
2019年  49完投
2020年  55完投

 これ以上ないくらいに、右肩下がりの数字である。2011年、2012年にはいわゆる「飛ばないボール」の影響で「投高打低」の傾向があったものの、それを加味して考えてもほんの10年で完投数が3分の1以下にまで減っている事実は大きい。


◆ シーズン10完投はわずか5人

 もちろん、全体の完投数減少とともに個人の最多完投数も減っている。同じく直近10シーズンにおける12球団最多完投投手を見てみたい。

【12球団最多完投投手】※直近10シーズン
2011年 14完投:田中将大(楽天)
2012年 8完投:田中将大(楽天)
2013年 10完投:金子千尋(オリックス)
2014年 9完投:則本昂大(楽天)
2015年 7完投:藤浪晋太郎(阪神)
2016年 5完投:菅野智之(巨人)、山口俊(DeNA)、石川歩(ロッテ)、涌井秀章(ロッテ)
2017年 8完投:則本昂大(楽天)
2018年 10完投:菅野智之(巨人)
2019年 6完投:大瀬良大地(広島)
2020年 10完投:大野雄大(中日)

 昨季は、コロナ禍により試合数が大きく減ったシーズンにもかかわらず大野雄大(中日)が10完投をしたことで注目を集めた。しかし、沢村賞の基準にもなっているものの、現在ではシーズン10完投を達成する投手はなかなか現れない。

 この10年のあいだにシーズン10完投を達成したのは、大野の他、2011年の田中将大(楽天/14完投)とダルビッシュ有(日本ハム/10完投)、2013年の金子千尋(オリックス/10完投)、2018年の菅野智之(巨人/10完投)の5人のみだ。

 それを思えば、先発完投型投手の希少性は年を追うごとに増しているといえる。また、分業制の浸透に伴い、中継ぎ投手の登板過多、負担増加を問題視する声も増えている。先発投手に完投を求めるという桑田コーチの主張ももっともだ。投手陣全体がシーズンを通して高いパフォーマンスを維持するため、ひいてはペナントレースを有利に進めるためにも、試合の最後までマウンドに立ち続ける先発完投型投手がいまこそ待ち望まれているのかもしれない。


文=清家茂樹(せいけ・しげき)