◆ ピンチをチャンスに!コロナ禍のサバイブ

 1番若林晃弘、2番丸佳浩、3番テームズ、4番ウィーラー、5番中島宏之……。

 20日、ジャイアンツ球場で行われたイースタン・西武戦で巨人のスタメンには、実績のある豪華メンバーがズラリと並んだ。




 新型コロナウイルス陽性判定を受けていた主力野手陣の戦列復帰に加え、来日後の隔離期間を終えた新外国人選手も合流したのだ。さらに三軍にいる陽岱鋼……はひとまず置いといて、左足甲に死球を受け、別メニュー調整中のMLB通算196発男の新助っ人スモークも控えている。

 これだけ選手が離脱しても一軍はセ・リーグの2位につけ、阪神と首位争いをしているのだから、やはりV2チームの選手層はぶ厚い。

 すでにイースタンに出場した主力組の一軍復帰は秒読み段階…。そこで生き残りを懸け必死にアピールを続けているのが、開幕前に田口麗斗とのトレードでヤクルトからやってきた広岡大志、昨年9月に澤村拓一(現・レッドソックス)とのトレードでロッテから移籍の香月一也である。



 まさに当落線上でサバイブする広岡は、4月上旬に一時ファーム行きを告げられるも、チームを襲ったコロナショック(4月4日に9選手入れ替え)で急転一軍残留。

 13日の中日戦では、昨年の沢村賞投手・大野雄大から移籍後初アーチとなる決勝弾を東京ドーム右翼席に叩き込み、原監督も「近々未来、必ず主力選手になってくれると思っています」(球団公式サイトより)と絶賛した。


 智辯学園高時代は岡本和真の1年後輩で、19年は10本塁打、昨季は10月以降に5本塁打を記録している将来の右の大砲候補。

 身長183センチの大型野手だが、一塁だけでなく、二塁や遊撃を守れる万能性も高く評価されている。


 同じくチームのピンチをチャンスに変えたのが香月だ。

 大阪桐蔭高時代に日本代表で同い年の岡本とクリーンナップを組み、甲子園Vも経験している左打ちのパワーヒッターは、6日にその思い出の地の阪神戦で左中間席へ移籍後初アーチ。

 22日の阪神戦でも東京ドーム右翼席上段へ第3号をかっ飛ばし、本拠地初お立ち台で「最高でーす! もうガムシャラに打席に入っていい結果が出たんで良かったです」と喜びを爆発させた。

 背番号66は、度々「5番・一塁」で先発起用されるほど首脳陣の期待値は高い。



◆ リカバリートレード

 広岡は97年4月9日生まれの24歳、香月は96年4月16日生まれの25歳だ。

 近年の巨人のドラフト事情を振り返ると、ご存知の通り抽選でその年の注目野手を逃し続けている。ちなみに、村上宗隆(ヤクルト)と佐藤輝明(阪神)の両者に入札したのは12球団で巨人だけだ。さらに言うなら、辰己涼介(楽天)も抽選で外している。


 決してスカウトの目の付けどころは悪くない。ただ、絶望的にクジ運が悪いのである(毎年のようにAクラス入りしているため、当たりクジが残っていないという見方もできるが……)。

 窓際で紅茶を啜るようにナチュラルに目玉野手を抽選で逃し、代わりに上位指名した投手が続々と入団後は故障に苦しむ悪循環。結果的に、岡本以外の一軍にいる若手野手は俊足巧打の同タイプが被りまくった時期もあった(昨オフに山本泰寛は阪神へ金銭トレード、田中俊太は人的補償でDeNAへ移籍)。


 そこで、若年層のパワー不足を補うために、田口や澤村といった実績のある投手を放出してまで求めた、左右のスラッガーが広岡と香月だったのである。

 しかも、彼らはプロでの数年間の経験があり、年齢的には「“東京ヤクルト大学”と“千葉ロッテ大学”で鍛えられ、卒業後に巨人入りしたドラフト上位クラスの素材」というポジションである。

 例えば、上原浩治は一浪後に大学進学して4月生まれなので、ルーキーイヤーは今の広岡とほぼ同い年だった……なんて細かい計算は置いといて、チーム編成的に広岡と香月の獲得は、近年のドラフトでのクジ運の悪さをリカバリーするトレードだったと言っても過言ではないだろう。


◆ 「未来の巨人」の重要なピース

 第三次原政権も3シーズン目を迎えているが、復帰即連覇という圧倒的な戦績を見ても分かるように、「ペナントレースで目の前の結果を求める」という意味で原辰徳は間違いなく球界屈指の名将だろう。

 ただ、勝利のために妥協なき大物選手の獲得を続けるため、長く指揮を執る内に組織の高齢化と膠着化を招きやすいというデメリットもある。


 例えば、現在のチームでは、坂本勇人とFA移籍の梶谷隆幸はともに88年生まれで今年33歳、89年生まれの丸佳浩も先日32歳になった。3年後には皆35歳以上のベテランである。

 チーム事情としては、“サカカジマル”の80年代世代が健在な今の内に岡本和真、吉川尚輝、大城卓三、松原聖弥らに続く若い世代を育てておきたい。エース・菅野のメジャー移籍を見据えた投手陣の底上げと同じく、4番岡本をサポートできる長距離砲の育成は必須だ。


 前回政権時、原監督はV3チームが底を打った状態で、後任の高橋由伸監督に引き継ぐ形になってしまった。いや、丸投げと言ってもいい。

 結果的に由伸監督の3年間は「阿部慎之助の時代を終わらせ、4番岡本を育てる」ことに費やされてしまった。前任者がたっぷり収穫して、いわば畠……じゃなくて畑を耕すことから始めることを余儀なくされたのだ。そりゃあ、あんまりだぜタツノリ……である。


 原監督は今季が3年契約の3年目。来季以降も契約延長される可能性も高いが、次期監督が誰であろうと、今度はしっかりと次代のチームの下地を作った上で継承したいはずだ。

 いわば、広岡大志と香月一也は、その「未来の巨人」の重要なピースを担っているのである。


文=中溝康隆(ナカミゾ・ヤスタカ)