◆ 土壇場で示した存在感!

 25年ぶりのリーグ優勝を果たしたオリックス。終盤のZOZOマリンで行われたロッテ戦3連勝につなげた9回二死からT-岡田が放った逆転3ランや、コロナ禍の特例2021で緊急昇格した大下誠一郎のほっともっと神戸での追撃のソロとサヨナラ適時打など、今シーズンは143試合の中で記憶に残る場面が多かった。

 そんな中で、最もしびれる試合だったのが、今季最終戦となった、10月25日の楽天戦(楽天生命パーク)。土壇場に走者として出場し、2ランスクイズで本塁を踏むと、右中間への大飛球をキャッチする2つのビッグ・プレーを披露して勝利を決定づけたのが、11年目のスーパー・サブ、後藤駿太だった。

 オリックスが勝てば、同日のソフトバンク戦に敗れたロッテは残り3試合で1敗も出来なくなる、文字通りの大一番。14連勝中のエース・山本由伸が楽天の田中将大に投げ勝ち、楽天打線を4安打に抑えて、今季4度目の完封。打っては、2年目で遊撃の定位置をつかんだ紅林弘太郎が5回に先制打、7回にも適時打を放ち、勝利を引き寄せる働きを見せた。

 その試合でビッグ・プレーが飛び出したのは、9回の表と裏だった。

 まずは2-0で迎えた9回表、一死二、三塁。安達了一がカウント3-1から、ブセニッツの5球目、155キロの真ん中内寄り高めの直球を三塁前にバントで転がした。三塁走者の代走・佐野晧大はボールが転がった直後に生還。二塁走者の代走・後藤駿太も三塁手の鈴木大地が捕球し、一塁に送球する間に三塁を蹴って本塁を陥れた。

 鮮やかな2ランスクイズ。この試合で後藤は、右前打を放った杉本裕太郎に代わり、無死一、三塁から代走で出場。打者・T-岡田への初球に二盗を決め二、三塁と好機を広げていた。

 「夢中でやったこと。走ることも意識してやったわけではなかった」という後藤だが、冷静な計算があった。「(楽天生命パークは)人工芝でなく土のグラウンド。雨が降っていなくても少し湿りがある。(スクイズのサインが出て)安達さんが決めてくれれば、本塁は狙えるかなと。打球が速い人工芝では無理だった。土のグラウンドだからチャンスがあった」と、塁上で冷静に状況判断をしていた。

 三塁コーチャーで、後藤に本塁突入を指示した風岡尚幸・内野守備走塁コーチは「シーズンを通して前の塁を狙うことをやってきた。あのケースでは、走力のある選手には全員、狙えと言ってきた。たまたま、最終戦でそれが出たということ」と、当然のプレーだと平然と振り返った。

 ベンチで後藤の生還を、中嶋聡監督と共に喜んでいた水本勝己ヘッドコーチは言う。「大きなプレーだった。もちろん、2ランスクイズのサインはなく、風岡コーチと駿太(後藤)が同じように状況を見ての判断。常時、出場しない選手がそういうプレーをしたということは、みんながいい状態だということ。それぞれの役割が分かれば、もっと試合に出たいと思い、チームに競争が生まれてうまく回るようになる」と、控えに甘んじることなく、自分の役割を確実に果たしたことを評価した。

 後藤はその裏、今度は守りで貢献する。9回裏に右翼守備につき、一死から浅村栄斗の大飛球をフェンス際でジャンプして捕球するスーパー・キャッチ。ピンチの芽を摘んだ。

 2ランスクイズをベンチで見守った山本は、「3点差はまだ接戦。4点差、5点差になると1イニングで入ることが少ない。(2ランスクイズの)4点目は、とどめの1点という印象があった。あと1イニング。3点差と4点差では全く違う。本当に大きい1点だった」と回顧。最終回の超美技にも「浅村さんの右方向への打球はすごく飛ぶ。打ち損じか、若干、芯を外れたが、意外とフェンス際まで飛んだ。パワーがあるので、入っちゃうかな、と思った。捕ってもらえなければ二塁打。本当に助かりました」と感謝した。

 「屋外のナイターで、慣れていない球場。少し大げさだったかもしれないが、自分でもよく捕れたと思う」と後藤。好捕できた理由を「守りにつく前から、どんな打球が来てもフェンスにぶつかってケガをしてもいいという気持ちでいた」からだという。終盤のロッテ戦の守備で打球をファンブルして得点を許すミスをしていたこともあり、覚悟を持って臨んだ守りだったのだろう

 群馬・前橋商時代から俊足好打、広い外野守備で知られ“群馬のイチロー”と呼ばれていた後藤。オリックスに2011年のドラフト1位で入団。球団初の高卒新人外野手として開幕スタメンを飾った。しかし、打撃に課題があり、代走や守備固めでの出場が多かった。

 後藤は、優勝争いがピートアップしている10月14日に出場選手登録を抹消され、この日に登録されたばかり。気合が入るのは当然だったが、違う思いもあったという。

「クライマックスでベンチ入りし、出場できる保証はどこにもない。日本シリーズもわからない。この試合が、今季最後の試合になるかもわからない。だから、フェンスにぶつかろうが、何があろうが、絶対につかんだボールは離さないぞという気持ちでキャッチした」。

 あとがないという危機感。悲壮な覚悟の中で、それでも2ランスクイズと同様に冷静に状況を把握し、難しい打球を処理してみせるところに11年間の経験が凝縮されていたのだろう。

 2つのビッグ・プレーは、起用される機会が少ないサブであっても、グラウンドに立てば当たり前のようにやってのけるオリックス選手の意識の高さと、不断の努力のたまものだろう。

 そして、後藤がCS突破、日本シリーズはもちろん、「常勝オリックス」に向け、欠かせない選手であることも知らしめた。


文・写真=北野正樹(きたの・まさき)


【動画】魅せた2ランスクイズ!