この男の冷静な状況判断と覚悟ある勇気がチームに決勝点をもたらした。6月15日の中日戦[ナゴヤドーム]で、ビッグプレーが飛び出した。代走で途中出場した大累進が大仕事を果たした。場面は8回一死二、三塁。三塁ランナーの大累は松本の浅い一邪飛でタッチアップして決勝点となるホームを陥れた。

 自慢の快足を如何なく発揮した。そのプレーの直前に頭の中も整理ができていた。「浅いフライでもタッチアップしようと思っていた。狙っていました」。同点で迎えた終盤。コリジョンルールの関係で送球が少しでもそれれば、セーフの確率はグッと上がる。実際の打球は一塁の斜め右後方に飛んだ。一塁手のビシエドはホームに背を向けて捕球態勢に入った。「ストライク返球は難しい」と判断してスタートを切った。迷いはなかった。送球は大きくそれ、狙いどおりにホームを陥れた。50メートルを5秒7で走る。巨人に入団時は飼い犬との競争に勝ったエピソードを披露。「犬よりも速い」という異名でスポットライトを浴びた男が、試合後に初のヒーローインタビューでカメラマンからフラッシュの嵐を浴びた。

 プロ入り後は伸び悩み、アピールポイントの盗塁もなかなか決まらなかった。周囲へアドバイスを何度も請うた。かつて盗塁王に輝いた西川らから勇気をもってスタートを切ることの大切さを学んだ。ここ一番で助言を生かし、チームに大きな勝利を呼び込んだ値千金の一流の走塁術だった。