苦難を乗り越えてプロ初完封勝利を挙げた又吉(左から2人目)

 ブレークスルーした。6月6日のロッテ戦(ZOZOマリン)。試合後のヒーローインタビューに応えながら又吉克樹の目からは熱いものが込み上げてきた。

「見てのとおりです。何ででしょうね」

 言葉にするのは野暮だろう。涙のプロ初完封だった。

 140キロ台中盤の直球と変化球がさえた。4回の先頭サントスに内野安打を許すまで無安打投球。5回と6回に得点圏に走者を進めたが、「丁寧に投げ切れた」とホームを踏ませなかった。9回はあと一人のところから鈴木大地に四球を与えたが、最後は根元俊一を一ゴロに仕留めた。

 チームに勢いを与えるとともに、ルーキーイヤーの幻影を振り払った。怖いもの知らずの1年目は、67試合、9勝1敗、防御率2.21。他球団も攻略に必死になった。セットアッパーとして迎えた2年目は、救援失敗のシーンも目立った。すると聞こえてくるのは声援だけではなくなった。

 相手ファンに拍手で迎えられる屈辱も味わった。インターネット上の中傷を目にすることもあった。

「朝起きたら、球場に行かなきゃいけないって憂鬱になって、車に乗るのもイヤだった。外に出ること自体、つらかった」

 そんな苦難を乗り越えた。

 先発として結果を残した後、再びリリーフに戻り、いまや勝ちパターンに欠かせない投手として君臨している。又吉が自信とふてぶてしさを取り戻した幕張の夜。間違いなく前半戦のポイントとなったゲームだ。

写真=田中慎一郎