“今できること”を考え、東浜は行動している

 千賀滉大が右前腕部の違和感で大きく出遅れた。時を同じくして、昨季新人王の高橋礼も離脱中。そんな状況下で3月、東浜巨は開幕投手に指名された。昨年の右ヒジ手術から復活を期す立場。本当の意味でのエースとは違うかもしれない。だが、誰でも務まるはずのない大役を任された意味で、東浜は現在の“柱”にほかならない。

 張り詰めていた緊張の糸は一度、緩ませざるを得なくなった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、開幕は何度も延期に。「正直、こうなるとは……」。誰しもと同じ実感を口にした。「今は開幕投手うんぬんという気持ちはない」と言うのも偽らざる心情ではあるが「僕らにとっては試合をすることが仕事。いつ開幕してもいいように準備している」と言うのも本音だ。

 今できることは――。野球だけではない。東浜は、母が故郷・沖縄の病院で看護師を務めている。「普段、なかなか『ありがとう』とは言えないけど、こうなって、あらためてすごい仕事をしているんだなと……」。電話で伝えた。「ありがとう、気をつけて」。故郷では感染者が4月に入って急増。マスクなどが足りないという話を聞き、すぐに動いた。知人を介してマスク計4万枚の寄付を準備。自身の母校に計2万枚、そして沖縄県と、出身地のうるま市にも1万枚ずつ、医療従事者に届けることにした。

 先の見えない自主練習。ウエート・トレーニングを中心に黙々と汗を流す日々が続く。「こうして(練習できる)環境があるだけで率直にありがたい。とにかく一日でも早く終息してほしい」。ひたすら待つばかりでなく、今、日常は引き寄せるものでもある。

写真=湯浅芳昭