捕手で唯一2シーズン連続で規定打席に達した巨人の小林誠司。写真は今夏の球宴で本塁打を放った際の一枚

 アマチュア時代にクリーンアップを打ちながら、プロ入り後は打撃に苦しむ捕手は多い。いわゆる“打てる捕手”といえば、古田敦也(元ヤクルト)、城島健司(元マリナーズほか)、里崎智也(元ロッテ)、阿部慎之助(巨人、現在は内野手登録)が近年の代表例だが、現役選手で彼らクラス、つまり、シーズンを通してマスクをかぶりながら、打っても好成績を残せる選手は残念ながら見当たらない。

 そもそも今季規定打席に達した捕手は、ヤクルトの中村悠平(打率.243)と巨人の小林誠司(同.206)の2人だけで、パ・リーグに至ってはゼロ。これが2年連続となると小林だけなのだから、打てる、打てない以前の問題で、過去の侍ジャパンの選手選考で首脳陣が頭を悩ませ続けたのも理解できる。

 話が逸れたが、なぜプロ入り後に打撃に悩む捕手が多いのか。そんなファンの疑問に答えた里崎氏の回答が明確だ。

「プロ入り後に打撃に苦しむのは“捕手”だけではありません。内野手でも、外野手でも、アマチュア時代にクリーンアップを打っていて、プロ入り後にスタイル変更を余儀なくされる選手はいっぱいいますし、まったく打てなくなる選手もいます。そもそも、プロとアマでは住む世界が別次元なので、アマで打てたからといって、プロで打てるかどうかは分かりません。しかも、高校からプロに直接入ると金属から木製に変わります。これも天と地ほど違うもので、木製へのアジャストは捕手のみならず全員に当てはまるカベでしょう」

 ただし、ここ数年のプロの捕手の打撃成績が悪過ぎる点は里崎氏も認めており、守備を重視して打撃には目をつぶる風潮にも疑問を呈する。

「バットを持って打席に入る人で、打てなくてもいい選手なんて1人もいません。バットを持って入る以上は全員打ってなんぼ。もちろん、それは投手であってもです」

 キャンプ、シーズン中を問わず、守備練習(ブルペンでの投球練習など)に割く時間が多く、対戦相手の打者のデータを研究する時間も必要で打撃に手が回らないとする説も「捕手だから時間がないというのは大ウソ。打撃練習はほかの野手と変わらない時間がありますし、足らないと思えば個別に時間を設ければいいこと」とバッサリ。そして核心を突いたのが次のコメントだ。

「つまり、打てないのはそもそもの個人の能力の問題か、まだまだ練習が足りないか。『捕手だから』はいいわけでしょう。逆に捕手なんですから、どうしたら打てるのか、頭を使わないと」

 例えば今年、3月のWBCから何かと注目を集めた巨人の小林は、規定打席到達者でセ最下位の打率に終わった。そしてこの秋、高橋由伸監督の方針で秋季練習、秋季キャンプと守備練習はそこそこに、打撃練習8割の時間を過ごし、来季の成績アップを誓っている。そしてその小林の広陵高の後輩であり、この夏の甲子園で6本のアーチを架けた中村奨成(捕手)が来季より広島のユニフォームに袖を通す。今年、プロとアマの世界で話題に上ったこの2人を中心に、来年は捕手の打撃に注目したい。

文=坂本 匠 写真=BBM