西武での現役時代の東尾氏

 西武が埼玉県所沢市に本拠地を構えて今年で40周年を迎えた。このアニバーサリーイヤーを記念して、栄光の歴史に名を刻んだ“レジェンドOB”がメットライフに来場することになっている。その第1弾として4月3日、本拠地開幕戦に田淵幸一氏と東尾修氏が登場した。試合前、セレモニアルピッチで“対決”を行い、球場は大いに盛り上がった。

 西武で監督も務めたことがある東尾氏は現役時代、通算251勝をマーク。数々のタイトルも獲得しており、1983年、87年とMVPにも2度、輝いている。西鉄時代の先輩投手である河村英文のシュート、稲尾和久のスライダーを参考にして自分のスタイルを築き上げた。特に右打者の内角を厳しく攻めるシュートで体を起こし、外角のスライダーで打ち取る技術は芸術的。時折、見せる右打者への内角スライダーは、いまでいう“フロントドア”。頭脳的ピッチングで、西武黄金時代を彩った。

 かつて、正捕手・伊東勤をサポートする第2捕手として黄金時代を支えた仲田秀司に東尾氏のピッチングについて話を聞いたことがあったが、まさに「洞察力に優れた比類なき投球術だった」という。

「東尾さんには配球面など、いろいろと勉強させていただきましたね。例えばバッターのタイミングが合わずにファウルとなったときに、すぐにボールを返球しろ、と。『バッテリーのリズムに打者を引き込め』ということなんですけど、そうやって打者の反応まで見ているのは驚きました」

 さらに、「投球の際、捕手のミットと打者の両方が目に入っていた」そうだ。

「指からボールが離れる直前、打者に打ち気を感じなかったらど真ん中に投げ込み、タイミングが合っていると感じたらボールゾーンに投じるなど相手を見る余裕がありました。まるで指先に目がついているような投球。普通の投手はそこまでの余裕はないでしょう」

 現在、西武の一軍投手陣を指導している土肥義弘投手コーチも現役時代、東尾氏から「打者をよく見て投げるんだぞ」とアドバイスされたそうだが、じっくりと打者を観察して、投手主導の勝負に持ち込む術が秀逸だった。

 話を聞くだけで幻想がふくらむ。現在の打者を相手にしたら、どのようなピッチングをするか見てみたい投手の一人だ

文=小林光男 写真=BBM