今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。

榎本喜八「内気なベスト打者」



表紙は左から大洋・秋山登、大崎隆雄

 今回は『1961年7月31日号』。定価は30円だ。グラビアは華やかなオールスター・ゲームと直前のゲームで埋まる。巨人は大洋に連勝し、ついにセ・リーグの首位に立った。

 本文巻頭は『オールスターで見たライバル意識』。1戦目、レギュラーシーズンから中1日だった国鉄・金田正一は、とにかく投げたくないオーラを出し、3回途中には食事をとって「食べたからもう投げられない」と言ったらしい。セの監督だった大洋・三原脩も「登板予定の投手が食事をしまうなん言語道断です」と試合後、珍しく興奮した口調で言った。自由だ。

 パの三塁手ではファン投票で久々に西鉄・中西太が選ばれた。長く故障で苦しんできただけに球宴出場はうれしかったらしくご機嫌。報道陣にも「新人中西をよろしくお願いします」とおどけたゼスチャーで自己紹介。「2年間のブランクがあるから過去の記録なんか、少しも参考にならん。まったく新人と同じことだ」と言っていた。

『12球団週間報告』の阪神欄では「新合宿“虎風荘”着工」の記事がある。7月10日が地鎮祭だったらしい。野田社長は「現在の合宿(若竹荘)は部屋数が少なく、六畳に2人というのが現状で窮屈な思いをさせている。新合宿では四畳半に1人にしたい」と語っている。

『佐々木信也連載対談』では西鉄のエースとして勝ちまくる稲尾和久が登場。その中で「ぼくは卑怯者」という見出しがあった。こんなやり取りだ。

稲尾 その前はそれほど余裕がなかった。やっぱりカーッとなっていたけど、ただ、ぼくはなんというのかな、実際から言ったら卑怯ですよ。出さないから、気持ちを顔に。あーっと思ってもそれを中にしまってる。こんちくしょうと思うけど出さない。これは三原さんのおかげですよ。

佐々木 いや卑怯じゃないよ。

稲尾 人は人間ができているとかなんとか言うけど、実際から言ったら僕はポーカー・フェイスとうのは卑怯だと思うな(笑)。

 まあ、半分冗談だろう。

『連載選手面接』で、大毎・榎本喜八が登場。「内気なベスト打者」とタイトルはあったが、こちらはニコリともせず、こんなことを言っている。

「毎日が勝つか負けるかの激しいプロの世界です。敗者、勝者の無常観は、ある時期の僕の思考力をめちゃくちゃにしました。だから、その無常観に悩まされる心の安定を僕は合気道に求めました。合気道は武道としてより、精神修養の道として、僕は求めたのです」

 筆者の竹中顕は、そんな榎本を「クソがつくほどの生真面目で、これが25歳の華やかなプロ野球選手とは思えない」と書いている。

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 週べ60年記念シリーズ『巨人編』『日本ハム編』が好評発売中。第3弾の『阪神編』も鋭意制作中です。

 では、またあした

<次回に続く>

写真=BBM