MLB球界発展のために、敵味方関係なく自分の技術を教えるバウアー。もともとダルビッシュのファンでもあり、考え方に共通点も多い

 インディアンスのトレバー・バウアー投手と、カブスのダルビッシュ有投手には、いろいろと共通点があると思う。球界の古い慣習にとらわれず、成長するために、意欲的に新しいアイデアを試していく。そして良い成果が出ると、躊躇せず周りの選手と共有する。

 4月、バウアーがマリナーズの菊池雄星のために時間を取り、変化球についてアドバイスを送ったことがニュースになった。敵チームの選手に重要な情報を与えてしまうのはどうかという考え方があるからだ。

 ダルビッシュは「バウアーも僕も野球界全体の発展を考えていると思う。敵に教えてどうするんだっていうのは小さい話ですよ」と話した。ドジャースの前田健太投手は31歳になっても衰えを見せず成長を続けるが、それはダルビッシュのお陰だと明言する。

「僕の若いころ、栄養学とかトレーニングとか、同じチームでちゃんとしている人が少なかった。酒飲んでタバコを吸って、豪快な人が多かった。初めてオールスターに出たとき(2010年)にダルさんにいろいろと話してもらって、食事もトレーニングもちゃんとしているのを知りすごいなと。ダルさんはそのとき日本で一番良いピッチャーで、すごいピッチャーがこれだけやっているのに僕は何もしていない。差が開くばっかりだと。そこから意識が変わった」

 プロ野球選手はほかの選手よりも一本でも多くヒットを打ち、一つでも多く勝とうとする。すべて結果で評価される職業だからだ。だが2人のように、野球界全体の発展のために強いモチベーションを持つプロフェッショナルがいてもいいし、とても貴重なことだ。

 もともとバウアーはダルビッシュの大ファンだった。2人のために働くジョエル・ウルフ代理人は「トレバーはダルビッシュのピッチングを見るのが大好きで、以前は誰よりもよく見ていた。(かつての在籍球団)日本ハムやレンジャーズのものを誰よりも見ていたんじゃないか」と証言する。

 白球を自在に操って、「えぐい」変化で人々を魅了するダルビッシュ。彼より4歳年下のバウアーも、真っすぐ以外にカーブ、チェンジアップ、カッター、スライダー、シンカーと多彩な変化球を操るようになり、今やメジャーのトップクラスの投手に進化した。ダルビッシュもバウアーが始めたウォームアップ用のショルダーチューブを使ったり、制球力向上用の大きさや重さの違うボールを練習で試したりしている。

 父親がエンジニアで科学に造詣が深いバウアー。「MLBは何10億ドルの収益をもたらす巨大ビジネスに成長したのに、野球そのものが40年から50年前の考え方でプレーされ続けているのはおかしい。そこにはリサーチとか、科学は存在しない。バカげている」とMLB公式ホームページの取材で論じている。

 ダルビッシュもトレーニングや栄養について深く広く探求を続ける。イチロー氏の初動負荷理論についても本人に教えを請い、器具を購入してトレーニングを続けた時期もあった。何でも試し自分の頭で考える。

 英語で「LIKE MINDED PEOPLE(志を同じくする人々)」という言葉があるが、まさにそうだと思うのだ。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images