1年に好成績を残したオリックス・中川圭太(左)と大学最終打席(右)

 心が体を支配するとは、よく言ったもの。高い技術を持っていても、試合で発揮できなければ意味がない。結果がすべての試合のプロの世界ではなおのことだ。

 今年も10月17日にドラフト会議が行われ、12球団で計74選手が指名を受けた。大舞台で輝きを放った者や、夢かなわなかった者など、経歴は十人十色だが、その能力を評価されてプロの扉を開いたことには変わりはない。それでも、ここからは“実力社会”。そんなプロの始まりは、ドラフト“順位”という一種の“格付け”から始まるのかもしれない。

 とはいえ、ドラフトでの“順位”がすべてではないのは言うまでもない。毎年のように下位指名から一軍に定着する選手は現れている。

 今年でいえば、オリックスに7位で入団した中川圭太だ。開幕こそ二軍で迎えたが、ファームで結果を残すと、4月20日に一軍昇格。プロ初スタメンとなった4月24日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)の9回表には、相手守護神の森雄斗から一塁線を破る同点の三塁打と、勝負強さを発揮して一軍に定着すると、交流戦では打率.386で史上初となる新人での首位打者を獲得。二軍落ちすることなくシーズン111試合に出場し、最終的には打率.288、3本塁打、32打点の好成績を残した。

 そんな中川の大学での最終打席は“犠打”だった。4連覇を目指した秋季・東都リーグ、負ければ優勝が消滅する10月23日の亜大2回戦のこと。同点の延長11回裏無死一、二塁のサヨナラ機での場面。四番に座る中川は、ベンチから送られた“犠打”のサインをこすも、後続が倒れても無得点に。すると、直後の12回表に決勝点を奪われて1対2に敗れた。

 1年前の“最終打席”を本人が振り返る。

「正直、(サインを)無視して打ってやろうかという思いもありました。でも、キャプテンという立場もありましたし……。なんていうんですかね……。あのときの心境は、僕にしか分からないと思います」

 四番として決めたい思いと、主将として勝手なプレーはできぬ思いが交錯していたのは間違いない。それでも、負けて得た悔しさは財産だ。今季、早出特打に不慣れな一塁守備の練習など、試合前も精力的に汗を流していた中川。ここぞの場面で“打て”のサインが出される選手になるために――。そんな強い思いもまた、成長を助けていく。

 順位の上下はあるものの、現段階でのプロでの実績は、みなゼロだ。これからは、つかんだチャンスを、いかにものにしていくか。誰もが高い技術を持つプロの世界では、より“気持ち”も重要となる。

 今年のドラフトでも、指名を受けた際に「活躍」「成長」の2文字を口にした選手は多数。来季以降も“下位指名”から飛躍を遂げる選手は、きっとそんな強い思いを持っているはずだ。

文=鶴田成秀