今オフもチームの顔にまでなったファム(写真)をトレード。低予算の中でもチーム自体はっ常に上位に食い込む不思議なチームだ

 レイズは不思議なチームである。2018年は90勝72敗、19年は96勝66敗と好成績を収めているのに、観客動員は試合平均1万4000人でア・リーグ15球団中15位。16年68勝94敗で地区最下位に沈んだシーズンが1万5000人だったから、成績が観客動員に反映していない。17年、80勝82敗だったレイズは、主力のエバン・ロンゴリア(年俸1300万ドル)、コーリー・ディッカーソン(302万ドル)、ジェイク・オドリジ(410万ドル)をトレードするなどして、サラリー総額を8000万ドルから4600万ドルまで削った。 

 他球団なら再建モードといわれてしまう事態だが、実際には勝ち星を10個増やし90勝に届いている。なぜこんなことが起こるのか? そこにはレイズウェイと呼ぶべき、独特のアプローチがある。例えばトレードだ。このオフ、レイズは野手のリーダー的存在で、ファンの人気もあったトミー・ファムをパドレスにトレードした。

 打率.273、出塁率.369、21本塁打の好成績。交換相手ハンター・レンフローは打率.216、出塁率.289、33本塁打だった。どちらかというと、成績はファムが上だろう。足もファムのほうが速い。だがレイズは選手が活躍し、価値が一番上ったときに、一番良い見返りを得られるからとトレードをする。そしてレンフローは28歳でファムの31歳より若く、年俸も330万ドルでファムの790万ドルよりも安く、FAまで4年もありファムの2年よりも長く所有権を維持できる。

 さらに20歳で、MLB全体で54番目のプロスペクト、ザビア・エドワーズもついてきた。ポジションはミドルインフィールダーで快足のスィッチヒッターである。普通のチームは活躍した選手は来年も頑張ってと労をねぎらい引き止める。人気も上がっているはずで、チケット売上にも貢献できる。

 だがレイズは今が売り時と考える。ファンは不満だろうが、レイズはこうして才能のある安い選手をストックし続け、長期的にチームを良いポジションに保つのである。ライバル、ヤンキースはこのオフ、ゲリット・コールを獲得し、現時点で20年の年俸総額が2億4300万ドル、一方のレイズは5700万ドル。

 それでもレイズにはブレイク・スネル、タイラー・グラスノー、チャーリー・モートンの先発3本柱がいて、ブルペンも強力。打線は得点力に欠けたが、1年前に獲得した掘り出し物、オースティン・メドウズとヤンディ・ディアズを軸に、このオフ、筒香嘉智、レンフロー、ホセ・マルチネスらを補強。資金力の差を埋めている。

 もっともマルチネスのトレードは意外だった。18年のドラウト一巡16番目指名、MLB全体でトップ50に入るプロスペクト、マット・リベラトーレ投手を差し出したからだ。それだけ今季勝ちたいということだろう。マルチネスは左投手に滅法強く、打球速度と角度からもっと長打率(.410)が上がると判断した。年俸が212万ドルでFAまで2年なのも良かったのだろう。

 このように、人気商売らしからぬやり方で、名の知れた選手を放出して、誰なの? という選手と交換するため観客は増えない。そして年俸総額は低いがチーム自体は強いのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images