一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

水原監督、バビーのケンカ



表紙は巨人・王貞治


 今回は『1970年9月14日号』。定価は80円。
 
 まさに衝撃の写真が掲載されていた。
 8月26日、甲子園での阪神─広島戦。3回裏、外木場義郎の内角シュートが阪神・田淵幸一の側頭部を直撃。血まみれになり、耳に当てたタオルが血に染まっている田淵の顔がアップで掲載されている。今ならいわゆる「自粛」していただろう。すさまじい1枚だ。

 この場面、田淵の前の遠井吾郎が一死満塁でグランドスラム。田淵も遠井に続こうと打席に入った。外木場は、もともと相性がよく、打てそうな気がしていていたという。
 しかし、そこから先の記憶が飛んだ……。

 鈍い音がベンチまで聞こえた。倒れ込み、起き上がらない田淵。当たった個所はヘルメットではなく、左耳のあたりだ。
 球場詰めの医師が応急処置として田淵の左耳に消毒したガーゼをあてたが、見る見る真っ赤に染まった。すぐ担架で運ばれ、救急車で甲子園近くの病院へ。
 医師は、
「耳の中の出血が内耳なのか脳内のものか今ははっきり分からない。意識がはっきりしているので、脳内ではないだろう。骨折の恐れもないと思う」
 と診断。それが甲子園球場でも場内アナウンスで告げられた。
 田淵の生死さえ、心配されるほど凄惨なシーンだったのだ。

 実は阪神は、この日、この春、ドジャースが来日した際に使っていた耳当てがある「ミッキーマウス」と呼ばれるヘルメットを注文したばかりだったという。
  
 中日ベンチでは助っ人バビーの反乱が起こった。
 8月23日、甲子園での阪神戦だ。5回裏、怠慢プレーで単打性の当たりを三塁打にしてしまったライト・バビーに水原茂監督はすぐさま交代を告げた。
 しかしバビーはしばらくライトの位置から動かず、交代の選手が来てようやくノロリノロリと歩き出した。
 ようやくベンチに戻ったバビーに水原監督は、ベンチ裏を指さした。おそらく、「お前はもう宿舎に帰れ」と言ったのかもしれないが、これにバビーが切れて水原監督に近づき、何やらまくしたてた。すぐさま水原監督はバビーを突き飛ばすと、これにバビーも応戦し、突き飛ばし返した。
 実は、この日、バビーは家族を球場に呼んでいた。ミスで交代させられたシーンを、その前に見せてしまったことで感情が一気に高ぶってしまったのようだ。
 このとき、大きな外国人相手に一歩も引かぬ水原監督に「さすが」の声も多かった。
 
 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM