小林監督が選手に求めるのは「自治」



4月6日の選抜準優勝旗返還式。習志野高・角田勇斗主将(右)が準優勝旗を返還すると、大会主催者(毎日新聞社・広田勝己取締役)からレプリカ(写真)が贈呈されている

 見えない敵、新型コロナウイルス。刻一刻と変化し、予断を許さない情勢が続いている。習志野高(千葉)の野球部を率いる小林徹監督は、指揮官としての責務を口にした。

「このような社会状況が1日も早く改善し、高校野球に携わる者が、子どもたちの夢、希望を叶えられるように、泥だらけになりながら練習ができる日が来ることを、我々、指導する人間も願ってやみません。夏の大会に向けて、子どもたちの活動が再開できますよう皆が力を合わせて、お力添えもいただきながら、現場を預かる者として努力していきたい」

 昨春のセンバツで準優勝を遂げた習志野高。千葉県勢において、24年ぶりの快挙だった。本来は3月19日の開会式で準優勝旗を返還する予定も、大会は史上初の中止。4月6日、習志野市内の同校にて大会主催者(毎日新聞社、日本高野連)、千葉県高野連の関係者が出席しての「準優勝旗返還式」が行われた。昨年の大会、遊撃手として活躍した角田勇斗主将(3年)が毎日新聞社・広田勝己取締役へ準優勝旗を返還し、レプリカが贈呈された。

「数々の学校が受け取っている準優勝旗なので、とても重たく、貴重なものだと感じました。先輩方がこのような結果を残して下さり、本日、無事に返せたということは、とてもうれしいことだと思っています」(角田主将)

 学校は6日が始業式、7日に入学式だが、ともに規模を縮小し、時間も短縮して実施。8日以降は臨時休業(休校)となっている。部活動再開のメドも立っていない状況だ。政府からの要請を受け、3月2日から臨時休業となり、20日からは一部活動を再開したが、すぐに活動停止となった。3月はほとんど練習ができず、4月以降はさらに厳しくなり、すでに5月6日までの休校が決まっている。

 いま、何ができるのか。野球部員を集めた6日、小林監督はこう伝えたという。

「今まであまり、意識をしていなかった、普通に野球ができることが特別なことなんだ、と。いろいろな方の協力を得て、あらためて、普通に野球ができていたことを感じる機会になったし、感じなければいけない。今、お話したことは外に向かってのことであって、中に向かうものとしては、子どもたちにはこういう時期だからこそ、自発的に自主的にいわゆる『自治』。自ら治める、良いきっかけにしていかないといけない。与えられた状況、これが子どもたちにとっては決して良い状況ではないわけですけど、それをそのままにしておくのではなくて、何か良い方向に自分のプラスになるようなものにする契機にしてほしい。3カ月後に迫る夏の大会に向けて、できる限りのことを自発的に、全力で、その日にできる限りのことを頑張っている毎日であります」

公立の雄としての存在感


 主将の角田には十分、伝わっている。現在は自宅近くでのスイングやランニングに限られるが、体力が落ちないよう心がけている。

「チームを作る立場として、プレーできる感謝もありますし、自分自身でどれだけ追い込めるか。(その自覚、意識によって)どれだけ力になるのかを実感しています。チームで動けないことによって、ゲームの入り方、練習への取り組みがいかに貴重だったが、感じさせるときだと思っています」

 そして、チームの代表として決意を語った。

「チーム作りの部分で、ほかの私立の高校に比べて劣っている部分があるかと思うんですけど、そこは、夏の大会が開催されると決まったその日から、全力で作り上げていきたいです。目標を見失わず、甲子園出場を目指して頑張っていく」

 習志野市立の習志野高は県大会で昨年、春、夏、秋と3季連続優勝。強豪私学がひしめく千葉にあって、公立の雄として存在感を見せている。センバツ出場をかけた貴重な資料となる昨秋の関東大会では準々決勝敗退。事実上、あと1勝のところで3季連続での甲子園を逃しているだけに、夏へかける思いは相当である。

 主将・角田以外の部員たちは、返還式が行われた応接室の外で待機。式典が終わり、来賓が引き揚げる際には、深々と一礼して見送った。大会主催者は「この試練を胸に置き、この試練に打ち勝ち、この試練を生かすことも高校野球には大事なこと。この試練を胸にとどめながら、明日があると信じて、研鑽を積んでほしい」と話した。その言葉のとおり日々、感染対策を行い、現実と向き合うしかない。

文=岡本朋祐 写真=菅原淳