JR東日本・鈴木貴弘マネジャーは濱岡武明監督の下でチーム運営に専心する

 それは、裏方の「顔」だった。

「対外試合の自粛期間中も、限られた時間の中で練習をしてきましたが、今日、実際にオープン戦をして、選手たちが躍動している姿を見られて良かった。自分はさらに、現場をサポートできるようにしていきたいです」

 社会人野球を統括する日本野球連盟は、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言の全面解除を受け、6月6日から対外試合を解禁する通達を出した(無観客試合)。JR東日本は同7日、同社グラウンドで日本製鉄かずさマジックとオープン戦を実施した(5対3で日本製鉄かずさマジック勝利)。冒頭は、今季からマネジャーへ転身した鈴木貴弘の言葉である。

 日大三高では正捕手として2011年夏、横尾俊建(日本ハム)、高山俊(阪神)らとともに甲子園で全国制覇。立大では4年時に主将を務め、16年にJR東日本に入社し、アマチュア球界のエリート街道を歩んできた。

 社会人では4年プレー。昨年12月上旬の個人面談で、現役引退とマネジャー就任の打診があった。「レギュラーではありませんでしたが、チームの一員として自分がやるべき役割など、社会人野球の面白さが分かってきた時期だったので、現役にも正直、未練があったのは事実です。でも、形は違いますが、野球に携わることができることに感謝をして、新たな職務に全うしようと決意しました」。

 JR東日本野球部には、キャリア豊富な松浦健介マネジャー(法大)も在籍しているが、会社内の業務、連盟ほかとの渉外ら東京都内のオフィスに詰めることも多い。このため、千葉県柏市内での現場(グラウンド)は、鈴木マネジャーに任せることが多い。現役時代とは逆の立場で、戸惑うこともあるという。

「これまでは、自分のことさえ考えていれば良かったですが、当然ながら、マネジャーはチームのために動かなくてはならない」

 持ち前の明るさで、就任1年目の濱岡武明監督(駒大)以下、スタッフ、選手からも慕われている。高校で日本一、大学でキャプテンを務め、社会人野球でマネジャーというケースは珍しい。抜群の知名度だが、謙虚な姿勢を忘れない。

「信頼していただけるように、自分自身も、マネジメントにおけるスキルを上げていかないといけない。人とのつながりが大事。すべてがプラスであり、ありがたい経験をさせてもらっています」

 松浦マネジャーは「メディアの取材対応、スカウトとの連絡、オープン戦のマッチメーク、審判員手配など業務は多岐にわたり、その窓口が機能しなければチームが揺らいでしまう。マネジャーは野球部の顔。鈴木には期待しています」と、後継者の育成に尽力するという。

 元捕手らしく、先を読んで、人の気持ちを受け止める能力にも長ける。目配り、気配り、心配り。「マネジャー三原則」を胸に刻み、チームのために身を粉にして働くつもりだ。

文=岡本朋祐 写真=中島奈津子