自粛期間で新たな発見



JFE東日本・今川優馬は大卒2年目のドラフト候補。プロの各球団が毎年、補強ポイントにする右の長距離砲だ

 JFE東日本の右スラッガー・今川優馬(東海大北海道)の趣味は「動画観賞」だ。

 公式戦、オープン戦、打撃練習……。実戦ではベンチ横で、トレーナーや控え選手に撮影を依頼するという。大学時代から継続しており、スマホに保存されている「打席」は2000に及ぶ。ほぼ同じ角度で動画を回しているから、打撃不調時の「原因」も一目瞭然だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた活動自粛期間の約2カ月、今川はデータ整理に時間を割いた。社会人1年目、昨シーズンの全打席のカウント別、打球方向からの傾向を収集。パソコンに打ち込むのではなく、すべて手作業でノートに書き込み、頭にインプットした。

「相手バッテリーと勝負する前に、自分を知ることが大事」

 そこで、新たな発見があった。

「カウント2ボール2ストライクでは打率.150、フルカウントからは打率.280。いかに、3ボール2ストライクに持っていくかがポイント。2ボール2ストライクは投手有利のカウントです。低めのへ変化球の見極め、カットでファウルにする打撃が必要になる。打席での考え方を見直す機会となりました」

 入社1年目の昨年は超攻撃的な二番打者として、都市対抗初制覇に貢献。新人賞にあたる若獅子賞を獲得し、年間を通した活躍が認められ、外野手部門の社会人ベストナインを受賞した。今川のセールスポイントは、逆方向でもスタンドインできるパワー。外野守備においても110メートルを超える強肩で、50メートル走6秒0と足もある強打者である。

 活動自粛期間中はトレーニングに専念し、食生活にも気を使って体重2キロ増(176センチ88キロ)。ウエートアップで、明らかに飛距離が伸びたことが実感できたという。「勝負の年」と語る今季は、大卒2年目のドラフト解禁イヤー。プロ入りへの思いは強いが、実戦の機会はオープン戦に限られる。新型コロナウイルスの影響により、公式戦は相次いで中止。昨年の都市対抗覇者であるJFE東日本は、今年の本戦には推薦出場できる。予選免除の特権がある一方で、公式戦がないのだ。

「メッチャ、マイナスです(苦笑)……。でもオープン戦にもスカウトの方が視察に来てくださるので、そこで、成長した姿を見せるしかない。ただ、公式戦がないことを、プラスにとらえています。今回のデータ収集を含め、自分自身と向き合える。成長するのは自分次第。この時間を大事にしていきたい」

「試合を決められる選手に」


 JFE東日本は「超攻撃野球」をモットーとしている。昨年は二番・今川、三番・峯本匠(立大)、四番・平山快(東海大)、五番・岡田耕太(駒大)と大卒ルーキー4人が名を連ねた。「メジャー・リーグでは二番最強説がある。このメンバーの中で二番を打てれば、打線が機能すると思いました。入社してからずっと打ちたいと思っていたのが二番でした」。落合成紀監督(東海大)は今季、今川と平山を入れ替えるプランを描いている。つまり、今川には四番を任せる。指揮官はさらなる期待を込める理由をこう語った。

「これから彼が、ワンランク上の世界で活躍するためには、チームを背負っていかないといけない。あえてテーマを課したんです。ここ一番で強く、一振りで流れを変え、試合を決められる選手。次のステップへ向けて、背負うものを背負って、都市対抗連覇を達成して、プロへ行ってもらいたい」

 活動自粛明け初の対外試合となった6月9日のオープン戦(対日本製鉄かずさマジック)では「四番・右翼」で出場し5打数1安打。3球団のスカウトが見守る中で、持ち味の積極打法と鋭いスイングを披露した。

「リストが強く、スケール感が違う。右方向にも強い打球を打つと聞いており、右(の大砲)は数があまりいないですから、楽しみです」(楽天・後関昌彦スカウト部長)

 試合後の取材を受けると、その足でグラウンドへ戻った。早速、試合の動画を見て、スイングチェック。今川は打撃の求道者である。だが、こう自己評価する。

「センスのあるエリートではない。下手くそは、詰めていかないと……。見直しながら、課題をつぶしていきたいです」

 自画自賛。最も好きな動画は大学4年秋、星槎道都大・渕上佳輝(現トヨタ自動車)からの2打席連続本塁打だ。毎晩のように見て、モチベーションを高めるという。すでに、趣味の域を超越している。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎