「3つある中で、最後の望み」



都市対抗野球の舞台は東京ドーム。今年の開幕は11月22日で、仮に巨人が日本シリーズ(開幕は21日)へ進出した場合も、球場使用に影響はないという。つまり、社会人野球に優先権がある

 なぜ、都市対抗野球の開催を目指すのか?

 理由は2つある。

 社会人野球を統括する日本野球連盟(JABA)が主催する、全国規模の大会である社会人野球日本選手権(7月2〜15日)、全日本クラブ選手権(5月25〜28日)は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中止となった。

 残るは11月22日に開幕が予定される都市対抗のみ。開催を発表した7月2日の記者会見で日本野球連盟・清野智会長は「3つある中で、最後の望みでございます。可能な限り、準備を進めていきたい」と意気込みを語った。代表32チームを決める一次予選は7月4日の埼玉、山梨、滋賀を皮切りに全国各地で開幕。9月1日からは西関東、近畿から二次予選(全国12地区)がスタートし、10月12日までに終了するとの予選規約がある(ただし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により延期になった場合は柔軟に対応)。本戦開幕を逆算すれば、決断のタイミングであったのだ。

 もちろん万全の感染予防対策、選手の健康、関係者、観衆の安全と安心を確保した上での大会運営が大前提である。「まだ、不確定要素はありますが、政府のガイドライン、自治体の運営方針、地方のルールに従って我々としてはスタートしよう、と。その都度、細かい問題も出てくると思いますので、専門家の方のお知恵もお借りしながら進んでいきたい」と、清野会長は背筋を伸ばした。

 都市対抗野球の果たすべき役割とは何か?

 開催を目指す2つ目の理由を主催者の毎日新聞社・丸山昌宏社長は「社会人野球の最高峰の大会であり、かつ地域社会と一緒に盛り上がってきた。社会人野球そのものの文化が、根ざした大会である」と訴えた。1927年から昭和、平成、令和と歴史を刻み、企業と地域が一体となって育んできた背景がある。何としても、大会を途絶えさせない意義を語った。

 企業が野球部を持つ意味とは? 東京ドームでの年1回の応援は夏の風物詩(今年は11月開催)として定着している。野球を通じての社員、従業員の士気高揚の位置付けがある。

本大会で残す「通常応援」の可能性


 そこで、都市対抗の華である「応援」である。6月22日に示されたJABAのガイドラインには「観客の座席は極力2メートル(最低1メートル)離すこととする。ただし、同居する家族はこの限りではない。また、観客席で大声を出すこと、太鼓等の鳴り物を使うこと、社歌・応援歌の合唱、及びエールを送ること禁止する」とある。つまり一次、二次予選においては、例年の応援スタイルは難しい。しかし、本大会では、「通常応援」の可能性を残している。

 同ガイドラインには「今後も感染症の動向や政府の対処方針の改定等を踏まえ、適宜見直しを行います。また、第91回都市対抗野球大会(本大会)のガイドラインは、別途作成します」とある。あくまでも、すべての大会運営において「基本スタイル」(丸山社長)を目指していくが、今後の感染状況によっては、制限が設けられる可能性もあるという。

 都市対抗と応援は運命共同体。だが、今年に関しては事情が異なる。清野会長は「(応援がなくて)やる意味があるのか? と……。応援も大事だが、野球をやることで、皆が集まって開催することに大きな意味がある」と、まずは大会開催へのこだわりを見せた。

 記者会見が行われた7月2日は本来、社会人野球日本選手権の開幕日。この日から、都市対抗へ向けて本格始動するのも、決して偶然ではないはずだ。全国36地区で行われる一次予選から熱戦が展開される。各チームとも唯一、2020年に残された「都市対抗」を励みに、練習に励んできた。ようやく目標が明確となり、現場のボルテージも上がっていくはずだ。

文=岡本朋祐 写真=松田杏子