一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

土井正博、無冠の帝王返上なるか



貫録が出てきた大杉の構え


 今回は『1971年10月4日号』。定価は90円。
 
 優勝はほぼ阪急で決まったが、シーズン終盤、パの打撃タイトル争いはし烈になってきた。
 9月13日時点で、打率が、1位がロッテのアルトマン.342、2位が同じくロッテの江藤慎一で.339。
 本塁打が、1位が東映・大杉勝男、阪急・長池徳二で36本、3位は近鉄・土井正博35本、4位がアルトマンで34本。
 打点が、南海・門田博光、土井正博で104だった。

 史上初のセ、パでの首位打者獲得に燃える江藤は言う。
「ワシがここまでこれたのもジョージ(アルトマン)のおかげ。あんなに野球に対して真面目に取り組む男もほかにはいない。同じチーム、それも尊敬するジョージと争うのはつらい。だけど、ワシもここまできた以上、首位打者を獲らないと男がすたる」
 一方のアルトマンは、
「首位打者? エトーさんよ」
 とまるで他人事。
「エトーさんはバッティングアイがボクよりいいし、凡ゴロでもヒットにできる足を持っているしね」
 とも言っていた。

 本塁打王争いは、この後、15日に38号を打った前年のホームラン王・大杉が有利になったが、それでも
「まだ安心できませんよ。周囲からけしかけられ、ついその気になるとフォームを崩してしまう。いまはボールに逆らわずミートを心掛けているのがいい結果を生んでいるのでしょう」
 と珍しく? 優等生コメント。

 打点ではプロ入り2年目の門田が好調を維持していたが、燃えていたのが、近鉄の27歳、土井だ。18歳の四番打者として売り出し、以後、リーグを代表する打者の一人となった。
 しかし、不思議とタイトルには縁がなく、無冠の帝王とも言われていた(最多安打は2回あるが、当時、表彰はない)。

 チームとしても本塁打、打点でタイトルの可能性がある土井を全面バックアップ。岩本堯監督は「なんとしてもタイトルを獲らせたい。球団の財産にも、本人の自信にもなる」と話していた。
 ただ、悩みとして、9月10日以降、近鉄は南海戦が11試合、阪急戦が2試合、東映戦が4試合、ロッテ戦が1試合。
 つまり、全試合がタイトルがかかった相手がいる試合で(といっても、かかっていないのは西鉄だけだが)、なかなか二線級の投手を試しで登板させづらくなっていた。
 一部のファンからは「太田(幸司)さんの登板が少ない」と言われるようになっていたという。

 土井自身は、
「あとは全力を尽くして、万が一タイトルを獲れなくても悔いのないシーズンにしたい」
 と語っていた。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM