新型コロナウイルス感染拡大のため中止となった今年3月のセンバツ出場32校の「救済措置」として甲子園で開催される「2020年甲子園高校野球交流試合」。今夏は地方大会と全国(甲子園)も中止となった。特別な思いを胸に秘めて、あこがれの舞台に立つ球児や関係者たちの姿を追う。

「角度のあるボール、上から投げるイメージ」



広島新庄高との交流試合。天理高の2年生・達は9回1イニングを3人で抑え、自己最速を1キロ更新する143キロを計測している

 ノーワインドアップから、バランスの良い投球フォーム。しかも193センチの長身。新型コロナウイルスの感染拡大による活動自粛期間中は、フォームを固めることに専念した。「角度のあるボール、上から投げるイメージです」。

 天理高の2年生右腕・達孝太が参考にしているのはやはり、エンゼルス・大谷翔平だった。

「体重移動です。(軸足の)右足で立ってから、(左)足がつくまでの下半身の動きです」

 広島新庄高との交流試合。2回からブルペンで準備を始め、捕手を座らせた。7回に再び体を作り、2対4の9回表から2番手として甲子園初登板。打者3人を右飛、見逃し三振、空振り三振と圧倒し、衝撃の13球だった。自己最速を1キロ更新する143キロをマークし、三振を奪ったフォーク、スライダーもキレ味抜群だった。チームはそのまま敗れたが、今後に期待を持たせるピッチングを披露している。

 天理高は優勝した奈良の独自大会をオール3年生で挑んだため、達の登板機会はなし。昨年11月の明治神宮大会準決勝(対中京大中京高)以来となる公式戦登板だった。「楽しかった。そこまで緊張しなかったです。初めての公式戦にしては良かった」と、コメントからも大物ぶりを感じる。

 さて、進路である。昨秋の段階では、かつて花巻東高3年時に大谷も目指していた、高卒での渡米の夢を語っていたが「あらためて自分でも考えてみたが、今から行っても通用しない」と方針転換。「大学、社会人の良さもある。最終的にはプロに行きたい」と、まずはNPB入りを目指す意向だ。

 甲子園のマウンドを踏んで、さらに思いが強くなったことがある。チームとして目指している「全国制覇」だ。「この甲子園の舞台で優勝したい。(新チームは)先発になってくると思うので、1イニング10球ではなく、試合を作れるようにしたい」。キリっとした表情からも、大谷に共通するスター性を感じる。気は早いが2021年ドラフトにおける、注目右腕から目が離せない。

文=岡本朋祐 写真=毛受亮介