「気負うことなく、いつもどおりやれ!」



東海大相模高・門馬敬治監督(左)の次男・功(中央)は今秋、一塁手のレギュラーとして神奈川県大会優勝に貢献した

 兄からの言葉が、支えになっている。

「高校時代、兄も副主将だったんですが『気負うことなく、いつもどおりやれ!』と。あの言葉で、気が楽になりました。いろいろと教えてくれます。家でも頼りになる存在であり、尊敬しています」

 東海大相模高で今秋から副主将を務める門馬功(2年)は、背筋を伸ばして言った。4歳上の兄は同校野球部OBで現在、東海大3年の三塁手のレギュラーとして活躍する大さんである。2歳上の姉・花さんも同校野球部で女子マネージャーを務めた。父が監督で息子が選手。本人にしか分からない重圧を抱えているが、心に秘め、すべてを力に変えている。

 門馬は「二番・一塁」として出場した鎌倉学園高との秋季神奈川県大会決勝で1安打1打点とチームの勝利(8対2)に貢献し、優勝を遂げた。東海大相模高は2019年に春夏秋と3連覇を遂げ、今春の中止を経て、今夏は神奈川県高野連主催の独自大会V。そして今秋を含めて「5連覇」と県内無敵を誇っている。

 県王者という先輩からのバトンをつなぐことができ、決勝の試合後、門馬は充実の表情を浮かべながらも、すぐに口元を引き締めた。

「みんなで練習のときから『県大会優勝』と言い合ってきました。率直にうれしいですが、約1カ月後には関東大会(10月24日開幕、千葉開催)が控えています。気持ちはもう、切り替わっています」

 尊敬する人物が、もう一人いる。甲子園で春2度、夏1度の優勝経験がある同校を率いる父・門馬敬治監督である。

「グラウンドに入ったら『監督』として見ていますが、家では『父』として、普通に接しています」

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、学校は休校。3月20日を最後に、6月中旬まで野球部の活動も休止となった。寮は解散となり、門馬は同校の敷地内にある自宅へと戻った。その後、兄も平塚市内にある大学野球部の合宿所から帰省してきた。この期間、父と兄、3人で汗を流すこともあったという。

「あの悔しさは忘れない」


 練習の虫である。地道な努力が実を結び、今夏の甲子園交流試合(対大阪桐蔭高)では背番号13でベンチ入り。甲子園デビューは8回の代打だった。結果は遊ゴロに終わり、チームも2対4で逆転負けを喫している。

「あの悔しさは忘れない。だからこそ、もう一度、甲子園に戻ることだけを考えている」

 副主将となった新チームでは一塁のレギュラー。中心選手として初めて県大会を制したが、前述のコメントにもあるように、浮かれる様子はまったくない。甲子園での春夏連覇が最終目標も、まずは目の前の一戦に集中する。

「関東大会制覇」

 大阪桐蔭高との交流試合で再確認したのは、同校野球部のモットーである「アグレッシブベースボール」だった。

「大阪桐蔭が相手で、甲子園での立ち上がりは、どこか引いたところがあったんです。とにかく、初回から攻めていく姿勢を失ってはいけないとあらためて感じました」

 この秋、一つのヤマ場となった横浜高との県大会準決勝でも、東海大相模高は初回から仕掛けた。序盤で主導権を握ると、勢いを切らさず、相手にも一切のスキを与えず、7回コールド勝ち(9対1)を収めた。関東大会でも当然、そのスタイルを一貫する。最も指揮官の指導方針を理解している背番号3の門馬が、同校のけん引役の一人となる。

文=岡本朋祐 写真=大賀章好