「良いアピールになったと思います」



JR東日本の大卒2年目左腕・伊藤将司はNTT東日本との都市対抗東京第1代表決定戦で1安打完封。チームを11年連続23回目の本大会出場へと導いた

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、社会人野球に残された大会は都市対抗のみ。本大会の開幕は11月22日、東京ドームである。ドラフト会議は10月26日。つまり、社会人ドラフト候補選手の公式戦における、最初で最後のアピールの場は、都市対抗予選である。

 この限られた機会でJR東日本・伊藤将司(国際武道大)は、最大の見せ場を作った。NTT東日本との第1代表決定戦(10月5日、大田スタジアム)で1安打完封(3対0)。9回一死まで無安打に抑える快投で、チームを11年連続23回目の本戦出場へと導いたのだ。

「先発としての役割は、試合をつくること。後ろには西田(西田光汰、大体大浪商高)、西居さん(建陽、中部学院大)が控えているので、あとはやってくれると信じている」

 伊藤は終始、淡々と話す。ノーヒットノーランの経験は、野球人生で一度もなかった。

「5回を終えてノーヒットだな、と。後半は意識しないようにしました。(ヒットを)打たれたことは悔しいです」

 許した走者は、失策と安打の2人のみ。二塁さえ踏ませない、完ぺきな投球に映ったが「バックに助けられた。高校のほうが良かった」と意外な発言。さすが、百戦錬磨の左腕だ。

 横浜高では2年夏、3年春の甲子園出場。国際武道大では全日本大学選手権で3、4年時に準優勝。2、3年時には大学日本代表でもプレーし、多くの場数を踏んできた。慌てずに、落ち着きと安定感が伊藤の武器だ。視察したあるNPBスカウトは言う。

「いつ、どんな状況でも85〜90点のピッチングができる。ベースを広く使えるコントロールも魅力的です」

 NTT東日本の先発は152キロ左腕・佐々木健(富士大)であり、伊藤にとって、モチベーションを高める一因となった。佐々木は6回途中2失点で敗戦投手となり、大卒2年目の同級生は明暗が分かれた。

「向こうはプロ注目のサウスポー。同じ東京で、左で良いライバル関係。勝てて良かった。良いアピールになったと思います」

 ドラフト解禁となる大卒入社2年目。初めてエースとして迎えた都市対抗予選で結果を残して、なおかつ「東京第1代表」という栄誉まで手にした。この日は、NPB10球団が視察。横浜高の同級生では高卒で淺間大基と高濱祐仁(ともに日本ハム)、大卒では渡辺佳明(現楽天)がプロ入りしており、伊藤は「同じステージに立ちたい」と、入社から2年間、努力を重ねてきた。ドラフト会議は10月26日。持てる力は、すべて出し切った。あとは、信じて待つのみである。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎