攻撃陣・投手陣ともに好調な今年の阪神。主力選手の多くが各個人成績の上位に入っており、今後の活躍次第では「阪神の選手が個人タイトルを独占する可能性」もゼロではない。では、過去に「1チームが個人タイトルを独占したシーズン」は何度あったのだろうか?

打撃タイトル独占は過去に5度しかない



86年は落合博満(写真)が三冠王を獲得するなど打撃タイトルを独占したが、ロッテの順位は4位だった

 1950年から2020年までの個人タイトル受賞選手を調べたところ、「打撃タイトル独占」は5例あった。

●1966年 巨人
首位打者:長嶋茂雄 .344
最多本塁打:王貞治 48本
最多打点:王貞治 116打点
最多盗塁:柴田勲 46盗塁

●1969年 巨人
首位打者:王貞治 .345
最多本塁打:王貞治 44本塁打
最多打点:長嶋茂雄 115打点
最多盗塁:柴田勲 35盗塁
最高出塁率:王貞治 272(出塁数)

●1971年 巨人
首位打者:長嶋茂雄 .320
最多本塁打:王貞治 39本
最多打点:王貞治 101打点
最多盗塁:高田繁 38盗塁
最高出塁率:王貞治 246(出塁数)

●1986年 ロッテ
首位打者:落合博満 .360
最多本塁打:落合博満 50本
最多打点:落合博満 116打点
最多盗塁:西村徳文 36盗塁
最高出塁率:落合博満 .487

●2015年 ヤクルト
首位打者:川端慎吾 .336
最多本塁打:山田哲人 38本
最多打点:畠山和洋 105打点
最多安打:川端慎吾 195安打
最多盗塁:山田哲人 34盗塁
最高出塁率:山田哲人 .416

 巨人は打撃タイトル独占を3度記録している。やはり長嶋、王というリーグ最高の打者2人と、赤い稲妻と称された柴田勲が同時に在籍していたのが大きい。当時は王と長嶋がセの「打つほうのタイトル」をほぼ独占しており、柴田が盗塁王になるか否かで全打撃タイトルを独占できるかが決まる時代だった。

 1986年にはロッテが打撃タイトルの完全制覇を達成。落合が史上最多となる3度目の三冠王に輝いた年で、出塁率もNPB記録となる.487をマークした。また、この年は後に「走る将軍」というニックネームで愛されることになる西村徳文が、自身初の盗塁王を獲得。落合と西村の2人でパの打撃タイトルを独占した。

 2015年はヤクルトの選手が全打撃タイトルを制覇。山田はトリプルスリー達成に加え、本塁打王、盗塁王、最高出塁率のタイトルも獲得した。ほかのタイトルはチームメートに譲る形となったが、打率は.007、打点は5点、安打も12本しか差はなく、展開次第では全タイトルを山田が独占する可能性もあった。

投手タイトル独占は意外と多い?



57年は稲尾和久(写真)が投手3冠を獲得し、西鉄は優勝

 打撃タイトル独占は過去に5例しかないが、投手タイトル独占は何例あるのだろうか? 同じく1950年から2020年までを対象に調べてみた。その結果は以下のとおり。

●1950年 毎日
最優秀防御率:荒巻淳 2.06
最多勝利:荒巻淳 26勝
最優秀勝率:野村武史 .818

●1951年 南海
最優秀防御率:柚木進 2.08
最多勝利:江藤正 24勝
最優秀勝率:中谷信夫 .875

●1954年 中日
最優秀防御率:杉下茂 1.39
最多勝利:杉下茂 32勝
最優秀勝率:杉下茂 .727

●1957年 西鉄
最優秀防御率:稲尾和久 1.37
最多勝利:稲尾和久 35勝
最優秀勝率:稲尾和久 .854

●1959年 南海
最優秀防御率:杉浦忠 1.40
最多勝利:杉浦忠 38勝
最優秀勝率:杉浦忠 .905

●1960年 毎日
最優秀防御率:小野正一 1.98
最多勝利:小野正一 33勝
最優秀勝率:小野正一 .750

●1961年 西鉄
最優秀防御率:稲尾和久 1.69
最多勝利:稲尾和久 42勝
最優秀勝率:稲尾和久 .750

●1964年 阪神
最優秀防御率:ジーン・バッキー 1.89
最多勝利:ジーン・バッキー 29勝
最優秀勝率:石川緑 .769

●1968年 南海
最優秀防御率:皆川睦男 1.61
最多勝利:皆川睦男 31勝
最優秀勝率:村上雅則 .818


81年は江川卓(写真)が投手2冠を獲得し、巨人は優勝

●1981年 巨人
最優秀防御率:江川卓 2.29
最多勝利:江川卓 20勝
最優秀救援投手:角三男 28SP

●1982年 日本ハム
最優秀防御率:高橋里志 1.84
最多勝利:工藤幹夫 20勝
最優秀救援投手:江夏豊 37SP
最優秀勝率投手:工藤幹夫 .833

●1991 広島
最優秀防御率:佐々岡真司 2.44
最多勝利:佐々岡真司 17勝
最優秀救援投手:大野豊 32SP
最多奪三振:川口和久 230三振

 セーブを対象としたタイトル表彰が始まるまでは、強力なエースがタイトル独占するケースが多かった。1954年の杉下、1957年、1961年の稲尾、1959年の杉浦がまさにその例だ。最優秀救援投手のタイトル表彰が始まって以降も、タイトル数が少ないこともあり、タイトル独占は3度発生。しかし、現在のように投手タイトルが6部門になってからは1度も独占はない。2020年はソフトバンクの選手が5部門を受賞したが、最多セーブは受賞できず。最多勝と最多奪三振のタイトルも他チームの選手が同数で並んでおり、1チーム独占とはならなかった。

 打撃タイトル独占は過去5例、投手タイトル独占は12例あったが、残念ながら「投打タイトルを全て独占」は一度もなかった。もし全タイトル独占となればNPB史上初の快挙。今季は過去例のないタイトル独占が見られるのか、各部門のトップ争いに注目してもらいたい。

文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM