試合の最終回を締めるのが、最も難しいと言われる。今季はプロ通算144セーブの西武・増田達至が15試合登板で0勝2敗8セーブ、防御率6.75と好不調の波が激しく、5月4日に登録抹消。守護神の座を剥奪された。球威、ウイニングショットになる変化球、制球力、重圧に負けない強心臓を持ち合わせていなければ守護神は務まらない。阪神のスアレス、中日のR.マルティネス、広島の栗林良吏、楽天の松井裕樹……現役No.1守護神は誰だろうか。
※成績は8月17日現在

侍ジャパンの守護神



広島・栗林良吏

・栗原良吏(広島)
※今季34試合登板、0勝1敗18セーブ、防御率0.53
※通算34試合登板、0勝1敗18セーブ、防御率0.53

 新人で開幕から22試合連続無失点の球団新記録を達成し、18セーブをマーク。真上から投げ下ろすフォームでスピンの効いた直球は球速以上の体感速度を感じる。打者が高めのボール球を振るのは直球が伸びている証だ。直球と同じ軌道から投げ込まれるウイニングショットのフォークが冴えわたり、カットボール、カーブと他の球種も精度が高い。

 球団OBの新井貴浩氏はフォークについてこう分析する。「高いところからバシッと投げ下ろすので、落差があってすごく嫌なのはもちろんなのですが、たとえ抜けてしまった場合でも、そう簡単に打たれない。これが彼のフォークの特長です。普通、フォークを含めて変化球の浮いたボールは、甘いボールになって長打になりやすいものです。でも彼の場合は、フォークが仮に落ちなかったとしても、そのボールがチェンジアップみたいになる。奥行きが使えるんですよね。打者からするとボールが来ないので、それこそど真ん中に来ても空振りしたりします。打てたとしてもファウルになるケースも多い。こういうピッチャーはすごく珍しいです」。

 東京五輪の野球日本代表・侍ジャパンでも守護神を務め、全5試合登板で2勝0敗3セーブ、防御率1.40と圧巻の投球で金メダル獲得に大きく貢献した。後半戦は阪神・佐藤輝明との熾烈な新人王争いも注目される。

虎の絶対的クローザー



阪神・スアレス

・スアレス(ソフトバンク、阪神)
※今季37試合登板、1勝1敗25セーブ、防御率1.49
※通算166試合登板、7勝13敗51セーブ37ホールド、防御率3.12

 首位を快走する阪神。前半戦のMVPはスアレスで間違いないだろう。37試合登板で失点したのはわずか3試合のみ。5月16日の巨人戦(東京ドーム)で自己最速の162キロを計測している。常時155キロを超える直球とツーシーム、チェンジアップのコンビネーションで制球力も良い。

 阪神OBで野球評論家の岡田彰布氏も週刊ベースボールのコラムで、「一にも二にもスアレス様々なんよ。阪神にはドンと構えたクローザーが存在する。スアレスがいてくれて、ホンマよかった。これが本音なんやろね。昨年オフ、スアレスの去就問題があった。メジャーに向かうのではないか……といったもので、かなり深刻な状況やった。それが残留になった。これで阪神に勝利の方程式が確立された。もしスアレスがいなかったら……。タイガースの進撃はなかっただろうし、まさにスアレス様々。矢野(矢野燿大)監督も安心して9回を任せることができる」とその働きぶりを絶賛している。

 球宴を終えてリフレッシュのため一時帰国し、7月25日に再来日。その後は隔離期間を経て今月9日から本格的な練習を再開した。コンディション調整を優先させるため後半戦の再開には間に合わなかったが、17日のDeNA戦(東京ドーム)で復帰登板。1イニングをきっちり無失点に抑えた。

育成枠からはい上がった右腕



中日・R.マルティネス

・R.マルティネス(中日)
※今季25試合登板、0勝1敗10セーブ、防御率1.09
※通算115試合登板、4勝8敗39セーブ21ホールド、防御率2.55

 身長193センチの長身から投げ下ろす最速161キロの直球に加え、スプリット、ナックルカーブ、チェンジアップと変化球も多彩で三振奪取能力が高い。スアレスと同様に制球力が良いのが大きな魅力だ。2017年に育成枠で入団。18年4月に支配下に昇格すると、19年に43試合登板で1勝4敗8セーブ14ホールド、防御率2.66と頭角を現す。昨年は守護神を務めて40試合登板で2勝0敗21セーブ7ホールド、防御率1.12と安定感がグッと増した。

 マルティネスは昨年9月に週刊ベースボールの独占インタビューで、「コントロールだね。そこが一番良くなったと思う。勝てる投手というのはスピードが速いというよりは、コントロールがいいと思う。もちろんスピードも大事だけれど、どんなに速くても甘く入れば打たれてしまうから」と好調の要因を語っている。球速ではなく制球力を重視しているから大崩れすることがない。誰もが認める球界を代表する守護神だ。

奪三振能力が抜群の左腕



楽天・松井裕樹

・松井裕樹(楽天)
※今季成績42試合登板、0勝2敗24セーブ、防御率0.64
※通算成績388試合登板、22勝40敗165セーブ61ホールド、防御率2.54

 松井裕樹は守護神が良く似合う。先発から復帰した今季は5月9日の日本ハム戦(札幌ドーム)でNPB通算150セーブをマーク。25歳6カ月の史上最年少で達成するなど、昨季は固定できなかった守護神で輝きを放っている。直球、スライダー、チェンジアップとすべてが一級品で三振奪取能力が高い。桐光学園では2年夏の今治西戦で大会史上最多の10連続奪三振と1試合22奪三振をマーク。1大会通算68奪三振は夏の甲子園で左腕投手の史上最多記録するなど、プロ入り後は球界を代表する左腕として期待された。素質が開花したのは15年。先発から抑えに転向すると、3勝2敗33セーブ12ホールド、防御率0.87をマーク。その後も守護神として活躍し、19年は38セーブで自身初の最多セーブ投手のタイトルを獲得した。

 松井を守護神に抜擢した当時の監督で現在野球評論家のデーブ大久保氏は週刊ベースボールのコラムで、こう語っている。「楽天は、どういう脳波を持った選手かを調べ、数値化しています。その中で裕樹は、短い時間で一気に集中し発揮できるクローザー向きの資質が医学で証明されたという話を以前にもしました。実際、裕樹を抑えに据えるとき、実は首脳陣、背広組とも大反対だったんです。しかし1人だけ『面白いんじゃない』と賛成してくれた方がいました。それが三木谷(三木谷浩史)オーナー。それでも反対の意見が多かったのですが、最後は当時一軍監督の私が強権を発動した(笑)、という形で裕樹を9回に据えました。本人も思っているでしょうが、150セーブは単なる通過点。まずは名球会入りとなる250セーブを目指してほしいですね。そこからは1つずつセーブを積み重ね、300セーブを目指してほしい。それができる男だと思っています」。

 チームの白星と前人未到の記録に向け、これからもセーブを積み重ねていく。

写真=BBM