高い守備能力



阪神・梅野隆太郎

 阪神ファンが今オフ最も注目しているのが、この選手の動向だろう。今季FA権を取得した梅野隆太郎だ。

 阪神の正捕手として、今季は開幕から首位快進撃の要となった。野球評論家のデーブ大久保氏は5月上旬に週刊ベースボールのコラムで、梅野の働きぶりを称賛している。

「守りの面では、すごく具体的に投手に指示を出しているのが分かります。4月24日の阪神対DeNA(甲子園)の試合を見ていましたが、新人の伊藤(伊藤将司)に対してミットを構えるだけで、どういうボールを投げたらいいのかという意思表示がはっきりしていました。つまり、ここはボール球でいいよ、ここは真ん中に投げてこいよ、という具合に。強いチームの選手たちは、具体的な根拠を持ち、具体的なプレーをしていくものなのです。

「梅野はそれが打撃でもできています。打てるゾーンというのは毎年変わるものです。今年はインハイが打ちやすいな、とか……なのですが、梅野は今年のヒットゾーンはこの辺りだとすでに分かっているはずです。だからこそ、内角の厳しい球を一、二塁間へ打つような打撃を見せたりするわけです。そして自分の打てるポイントを待つことができたことで、5割以上の得点圏打率をキープしているのだと思います」

 野球評論家の川口和久氏も同誌のコラムで称賛している。

「阪神首位の功労者は、間違いなく捕手の梅野隆太郎だ。守りの司令塔として投手を引っ張り、矢野燿大という捕手出身監督も絶大な信頼を寄せている。打っても得点圏打率5割以上と、とにかく勝負強い。(巨人との伝統の一戦)1999試合目となる14日の試合は、まさに梅野で勝った試合だった。勝ち越しのタイムリーは詰まった当たりだったが、外に厳しいボールを集められたあとのインコースをうまく弾き返している。リードもよかった。あの日の先発の青柳晃洋は、球威こそあったけど、左打者にうまく投げられていなかった。それをうまく操り、勝利投手に導いている」

 梅野の強みは捕手としての高い守備能力だ。捕球技術、ブロッキング能力が高く、2014年は出場試合数が規定に達した選手で唯一の捕逸0をマーク。強肩と正確な送球で「梅ちゃんバズーカ」と称されることも。19年には捕手でNPB歴代最高の123補殺を記録した。今年は東京五輪で侍ジャパンのメンバーに追加召集され、金メダル獲得に貢献した。

最終盤でスタメンを外れたが……


 悔いが残ったのはシーズン終盤にチームの力になれなかったことだろう。16年ぶりのリーグ優勝を目指していた中、10月12日の巨人戦(東京ドーム)以降、11試合連続で坂本誠志郎が先発マスクをかぶり、負けてV逸が決まった26日の最終戦・中日戦(甲子園)も梅野は最後まで出番がなかった。巨人とのCSファーストステージ2戦目で4週間ぶりに先発マスクをかぶったが、敗れて終戦。ベンチから引き揚げる表情に悔しさがにじんでいた。

 勝負どころのシーズン終盤で出場機会が減ったが、スポーツ紙記者は「梅野が正捕手であることは変わらない」と強調する。

「今年は開幕から出ずっぱりで、東京五輪にも出場したので心身で疲労も蓄積していたと思う。坂本の状態が良かったので10月はスタメンマスクが増えたが、梅野が正捕手であってこそ、坂本が『2番手捕手』として輝く。来季の優勝に不可欠なピースなのでFAで他球団流出となれば阪神は大打撃です。今オフの一番の懸案事項になると思います」(スポーツ紙記者)

 育ててもらった阪神への愛着が強い一方、他球団の評価を聞いてみたいという気持ちもあるだろう。FA権を行使すれば、争奪戦になることは必至。阪神残留か、移籍か――。梅野の決断が注目される。

写真=BBM