3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。バックナンバーを抜粋し、紹介する連載を時々掲載しています。

発熱してもノーヒットノーラン



注目度はプロ以上になっていた

 今回は『1973年8月6日号』。定価は100円。

 7月22日、栃木県営球場で作新学院高と真岡高の栃木大会2回戦が行われた。

 球場は1万5000人収容だが、1時間半前に満員。さらに球場付近に大勢が集まり、「球場には入れませんのでお引き取りください」のアナウンス。それでも誰一人帰らず、入り口で「入れろ」「入れない」の押し問答が何度も繰り返された。

 作新にとっては夏の緒戦だが、エースの江川卓は前日発熱のため練習を休んだ。江川によれば20日「扁桃腺の腫れ」で38度9分。すぐ病院で治療を受け、一夜明けると38度2分、昼には37度2分まで下がった。

 山本監督は「容態を見て大橋か江川かを決める」と言っていたが、江川は自分の先発を疑わず、

「おかげで熱もだいぶ下がってきたし、あすになれば元に戻りますよ。今度の甲子園は僕にとっても最後のチャンスですからね。ここで負けるようなら一生悔いを残すことになります。それを残さないためにもあすは全力を尽くしますよ」
 と話していた。

 しかし試合前、前日の言葉とは異なり、青白い顔で「先発は大橋だと思っていた。ここに来るまで投げるとは思っていなかった」と江川。熱は36度8分だった。

 試合では途中つらそうな顔を見せ、試合後「5、6回ころ気持ち悪くなった。へばった。必死に頑張った」と語ったが、終わってみれば、21奪三振で通算10回目のノーヒットノーランだった。

 では、また。

<次回に続く>

写真=BBM