注目度の高い試合で好投



CSファイナル初戦で完封勝利を遂げた奥川

 6年ぶりのリーグ優勝を飾ったヤクルトはクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージでも強かった。2位・阪神を撃破した勢いで「下克上」を狙う巨人に対し、リーグ1位のアドバンテージの1勝を含めた3勝1分けと一度も負けずに日本シリーズに進出した。

 短期決戦も若い力が躍動した。今季のヤクルトを象徴する戦いぶりは先発陣の顔ぶれに現れている。初戦の先発は高卒2年目の奥川恭伸。今季9勝4敗、防御率3.26とブレークした右腕は大一番でプロ初完投初完封の快挙を成し遂げる。球威十分の直球を軸にしてスライダー、フォークも冴えわたった。抜群の制球力で巨人打線に本来のスイングをさせず9奪三振。わずか98球で“調理”した。

「初戦に奥川で勝ったことでチーム全体がいけるぞという空気になりましたね。重圧がかかるマウンドに奥川を送り込んだ高津監督の采配も光ります。注目度が高くても物怖じしない性格を見抜いて抜擢したのでしょう」(スポーツ紙記者)


CSファイナル第2戦で勝利投手となった高橋

 2戦目の先発は左腕・高橋奎二。今季は6月から先発ローテーションに食い込み、14試合登板で4勝1敗、防御率2.87。昨年までは好調の波が激しく、マウンド上で喜怒哀楽を露骨に出していたが、マインドコントロールができるようになり大量失点で崩れることがなくなった。年下の奥川の快投に刺激を受けたのだろう。6回2安打8奪三振無失点で、相手エース・菅野智之に投げ勝った。3戦目は原樹理が先発。2回途中に投手強襲の打球を右手に受けて負傷降板したが、救援で緊急登板した高卒4年目の金久保優斗が3回2/3で1失点と巨人打線の勢いをかわし、引き分けにつなげた。

 リーグ優勝を達成できたのは、投手陣の総合力が格段に上がったことに尽きる。2年連続最下位だった2019、20年はチーム防御率がリーグワーストと「投壊状態」だったが、今季はリーグ3位の3.48と大きく改善した。抜きん出たエースがいるわけではなく、今季2ケタ勝利を挙げた投手は1人もいない。奥川、小川泰弘の9勝が最多。10月は原、小川、奥川、高橋、金久保、高梨裕稔、石川雅規、サイスニードと22試合で8投手が先発している。

 成長途上の奥川は負担をかけさせないために中10日、高橋奎二も登板間隔を空けるなど無理をさせなかった。状態の良い投手を使うことで、質・量ともにハイレベルな競争が繰り広げられる。左右のエースとしてチームを長年支えてきた小川、石川がCSで登板がなかったのは、若手たちが台頭した証と言えるだろう。

ベテラン左腕も感嘆


 若手たちの活躍がベテランの刺激になる。石川は週刊ベースボールの取材でこう語っている。

「やっぱり、奥川のピッチングを見ていてもよく分かりますよね。あれだけポンポンとストライク先行で追い込んだら、バッターも苦しくなりますよ。フォアボールも出さないし。奥川が投げるとき、打線もよく打つじゃないですか。それはやっぱり、彼の醸し出す立ち居振る舞いだったり、ピッチング内容だったり、そういうものがいいリズムを生んでいるんだと思うんです。いいピッチャーというのは年齢に関係ないですから。いつも、“うらやましいな”と思いながら見ていますね(笑)」

 チーム最年長の41歳左腕もまだまだチームに必要な存在だ。若手、中堅、ベテランが、がっちりかみ合ったヤクルト。「投手王国」が実現する可能性は十分にある。

写真=BBM