チームを戦力外となり、自由契約となった選手が、他チームに拾われるケースは少なからずある。プロの世界で通用しないと判断された選手が、そこから逆転するのはそう簡単ではないが、中には予想外の活躍を見せた選手もいるのだ。今回は、過去10シーズンを対象に、自由契約からチームの主力へと成長した選手をピックアップしてみた。

日本一に貢献した中継ぎ



今季、64試合に登板して日本一に貢献したヤクルト・今野

●今野龍太(楽天 ⇒ ヤクルト)

 2021年シーズンにセ・リーグを制し、日本一にまで上り詰めたヤクルト。そのヤクルト中継ぎ陣を支えたひとりが今野龍太だった。もともとは楽天に入団した今野だが、二軍では好投するものの一軍では実力が発揮できず。楽天では6シーズンで15試合の登板に終わり、2019年オフに戦力外となる。現役続行を希望する今野を拾ったのがヤクルトだった。

 加入1年目の2020年は一軍で20試合に起用。1シーズンで楽天時代を超える試合を経験した今野は防御率2.84と好投を見せた。特に高い三振率が評価され、2021年はリリーバーとして64試合に登板。清水昇、スコット・マクガフと共に勝利の方程式の一員となり、自己最多の28ホールドをマークした。2022年もリーグ連覇に向けて好投が期待される。

●福山博之(DeNA ⇒ 楽天)

 中継ぎ投手の「逆転ストーリー」では、2012年オフにDeNAを戦力外となり、楽天に移籍することになった福山博之も挙げられる。2010年ドラフトで横浜に指名された福山だが、2011年、2012年と一軍で好投することができなかった。走力の高さを評価していたチームが野手転向を打診するも、福山がこれを固辞したため契約解除となった。

 DeNAから戦力外となった福山だが、2012年11月に楽天と契約を結ぶことが発表され、福山は楽天の一員として再スタートすることになる。楽天1年目の2013年は22試合の起用にとどまるが、ここで好投を見せたことで翌年は65試合と登板数が激増。翌2015年も65試合、さらに2016年はリーグ最多の69試合と、チームに欠かせない存在となった。2017年オフには推定年俸1億2000万円で契約更改。まさに戦力外からの大逆転といえる。

●坂口智隆(オリックス ⇒ ヤクルト)

 現役最後の「近鉄所属経験のある選手」がヤクルトの坂口智隆だ。2005年の球団合併措置でオリックスに加入した坂口は、2011年にリーグ最多安打のタイトルを獲得するなど主力として活躍。しかし、肩の負傷などが原因で徐々に低迷し、2015年にはわずか36試合の出場に終わってしまう。この年のオフに、オリックスは再契約交渉で大幅減俸を提示するが、坂口は自由契約を申し入れてチームを退団。ヤクルトに入団することになる。

 ヤクルトに加入した坂口は、2015年の低迷がうそのように活躍した。2016年は141試合に出場して155安打をマーク。翌2017年も再び155安打を放つと、2018年にはオリックス時代の2010年以来となる打率3割を記録した。残念ながら2019年は骨折の影響もあり低迷。2020年は再び114試合に出る活躍を見せるも、2021年は再び負傷により25試合の出場にとどまった。しかし、日本シリーズではチームを支える活躍を見せ、日本一に貢献した。


新井は自由契約から古巣・広島に復帰し、16年にはMVPに輝いた

●新井貴浩(阪神 ⇒ 広島)

 坂口のように自ら自由契約を申し入れ、他チームに活躍の場を求めるケースも少なくない。例えば、広島からFAで阪神に移籍し、自由契約となった後に再び広島に戻った新井貴浩が挙げられる。阪神時代には四番打者として起用されるも、広島時代のような活躍ができず。2014年にはマウロ・ゴメスとのポジション争いに負け、出場試合数は阪神時代最低の94試合、打撃成績も低調に終わってしまう。そのため、新井は出番を求めて阪神に自由契約を申し入れ、古巣・広島に戻ることになった。

 広島に戻った新井は、調子を取り戻すために序盤は代打での起用が中心となる。しかし、持ち前の打力は健在で、シーズン中盤にはスタメンの座を勝ち取る。翌2016年は主に四番、五番を任され、打率.300、101打点などリーグ上位の打撃成績を残し、チームのリーグ優勝に貢献。また、史上47人目の2000安打も達成する。この活躍もあり、新井はリーグMVPにも選出。残念ながら翌年以降は再び調子を落とし、63試合の出場に終わった2018年で現役を引退した。

●ホセ・ロペス(巨人 ⇒ DeNA)

 自由契約後に他チームに渡り、不動の存在となった助っ人も少なくない。2014年オフに巨人を自由契約になり、DeNAへと活躍の場を移したホセ・ロペスもその一人だ。2013年に1年契約で巨人に加入したロペスは、121試合に出場し、球団の1年目助っ人としは久しぶり(1995年以来)の規定打席に到達。高い守備能力からゴールデン・グラブ賞も受賞した。しかし、翌2014年は打撃不振に加え、一塁に阿部慎之助が起用されたこともありスタメン機会が減少。結局この年限りでチームを退団することになった。

 巨人を自由契約となったものの、22本塁打のパワーとゴールデン・グラブ賞を獲得する守備力を高く評価していたDeNAがロペスを獲得。加入1年目から開幕スタメンで起用されると、140試合で打率.291、25本塁打と期待を超える活躍を見せた。翌2016年はケガで調子を落とすも、再びゴールデン・グラブ賞を受賞。2017年は最多打点と最多安打のタイトルを獲得した。ロペスは退団する2020年までDeNAに在籍。「一塁手としての連続守備機会無失策」のNPB記録を樹立し、2016年から4年連続でゴールデン・グラブ賞に選ばれるなど、チーム史に名を残す活躍を見せた。

 過去10シーズンの「自由契約から逆転した選手」をピックアップして紹介した。2021年シーズンも多くの選手が戦力外となったが、元所属のチームとの再契約を勝ち取ったり、他チームに拾われた選手もいる。果たしてその中に「自由契約からの大逆転」を見せる選手はいるのか、今後の活躍に期待したい。

文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM