オリックス・山本由伸

 負けられない大一番を託される。25年ぶりの優勝を果たした2021年。1敗の重みが増す終盤は、そんな試合の連続だった。

 中でも圧巻は10月25日、楽天とのシーズン最終戦(楽天生命パーク)だ。チームは首位に立つも、残り試合の関係で、2位ロッテにマジック3がついて迎えた同日。楽天・田中将大との投げ合いとなった一戦は、両者譲らず4回まで無失点投球が続く。“我慢比べ”となり、5回に援護点をもらうとギアが上がる。5、6回と先頭打者に安打を浴びながらも、後続を斬って本塁は踏ませずスコアボードにゼロを並べ続け、9回もマウンドへ。球数が100球を越えても150キロ超を計測と球威が衰えることなく、今季4度目の完封で優勝を手繰り寄せる金星を手にした。

「とにかく勝つことだけを考えて、思い切り腕を振りました」

 5月から続いた自身の連勝を15まで伸ばし、終わってみれば18勝5敗、防御率1.39、勝率.783、206奪三振、4完封で史上8人目の“投手5冠”を達成。そんな記録も「いろんな方にサポートしていただいた。自分の実力以上の数字だと思います」と謙遜する23歳の根底にあるのは「勝たないと楽しくない」の思いだ。自分の成績より勝利を期して腕を振る。周囲から信頼されるのは、そんな思いをマウンドで示し、結果で応えるからこそ。誰もが認める実力を持つ男が“エース”と呼ばれ始めた理由は残した数字だけではない。

写真=BBM