攻守走であふれる野球センス



桐光学園高の1年生・矢竹は春季神奈川県大会で優勝に貢献。「二番・中堅手」として躍動した

 1年生の足と判断力が、試合の流れを変えた。

 桐光学園高は桐蔭学園高との春季神奈川県大会決勝(5月1日)で、1回表に1点の先制を許した。その裏、一死走者なしから打席に入ったのは二番・中堅手の1年生・矢竹開(やたけ・かい)だった。

 抜群のミート力で、中前へ運んだ。相手中堅手の守備位置と捕球の動きを見た矢竹は、50メートル走6秒1の快足を飛ばして、二塁を陥れた。通常であればシングルヒットの打球を、二塁打にしてしまったのである。

 スキのない野球が伝統として根付く桐光学園高・野呂雅之監督は「好走塁だった」とニンマリ。その後、二死二塁から左前への浅い当たりではあったが、矢竹はムダのないベースランニングで同点の生還。この回、もう1点を加点して逆転すると、2回には打者一巡で3得点。完全に主導権を握った桐光学園高は6対2で12年ぶりの優勝を遂げた。

 矢竹は横浜高との準々決勝から「二番・中堅」で先発出場。最終第5打席で中前打を放つと、横浜商高との準決勝では2安打。そして、桐蔭学園高との決勝でも初回の中前二塁打に、6回には内角球に対して、うまくヒジをたたんで右翼線二塁打とセンスの良さを発揮した。中堅手としても、守備範囲の広さが武器。この決勝でも、明らかにライトの打球にも軽く追いついてしまい、右翼手と接触するほどのアグレッシブな動きを見せていた。

「守備中は二塁手の米山さん(幸汰、3年)が声をかけてくれ、主将の篁さん(哲郎、3年)をはじめ、先輩方がノビノビとプレーをさせてくれます。決勝は緊張していましたが、初回に失点したことで体がほぐれました」

「野球でプロに行きたい」


 幼少から小学6年まではサッカーとの二刀流選手だった。FC町田ゼルビアの下部組織に在籍し、ポジションはFWだった。好きな選手はドイツ代表として活躍したトニ・クロース。

「自分の中では、野球でプロに行きたいという目標があります。サッカーは野球のための体力づくりの場。野球のほうが好きです!!」

 6年時には侍ジャパンU-12代表、ヤクルトジュニアでもプレーした才能の持ち主だ。

 左投げ左打ちの俊足外野手で桐光学園高OBと言えば、慶大を経て、昨年のドラフトでオリックス4位指名を受けた渡部遼人の姿が思い浮かぶ。視野が広く、野球をよく知っている点でも酷似だ。

「同じ学校で、高校3年間で成長された先輩。追いついて、超えられるようになりたい」

 矢竹は自ら考え、実践する桐光野球のスタイルに合っていると言える。攻守走の3拍子で魅了できる、今後の活躍から目が離せない。

文=岡本朋祐 写真=矢野寿明