巨人で熾烈なレギュラー争いが繰り広げられているのが捕手と一塁だ。捕手は打撃不振の大城卓三が6月2日に登録抹消。故障以外で二軍降格はプロ5年目で初だった。一方、一塁もレギュラーと呼べる選手はいない。21歳の増田陸、33歳の中田翔、39歳の中島宏之の3人はそれぞれ強みがある。ポジションをつかむ選手は果たして――。
※成績は6月4日現在

試練を乗り越えてつかむチャンス



6月4日のロッテ戦で同点打を放ち、チームの勝利に貢献した

・増田陸
今季成績 15試合出場、打率.355、2本塁打、6打点、1盗塁

 増田と巨人は不思議な縁で結ばれている。明秀日立高の恩師・金沢成奉監督は光星学院高(現・八戸学院光星高)監督時代に坂本勇人を育てたことで知られる。同じ右の強打者で遊撃を守る増田も坂本にあこがれを抱いており、ドラフト2位で入団したのは運命だったかもしれない。坂本が入団時の背番号61を背負い、入団時の目標に「トリプルスリー」を掲げていた。
 
 ただ、高卒2年目で遊撃のレギュラーをつかんだ坂本とは対照的に、増田陸は試練が続いた。プロ1年目の2019年6月下旬に有鈎骨骨折と三角線維軟骨複合体損傷の手術を受け、21年オフに育成契約となり、背番号は061に。ファームの試合で遊撃は後輩の中山礼都が守っていた。

 プロ4年目。背水の陣と言っても大げさではなかっただろう。春季キャンプは三軍で迎え、2月15日に二軍へ、4日後の19日に一軍昇格すると練習試合、オープン戦で打率.308をマークし、3月11日に再び支配下登録。5月5日にプロ入り初の一軍昇格を果たした。
 
 試練を乗り越えた男はチャンスを確実にものにする。5月15日の中日戦(東京ドーム)でも柳裕也のカットボールを左中間に運ぶプロ初アーチ。同月31日のソフトバンク戦(東京ドーム)から5試合連続一塁でスタメン出場。6月3日のロッテ戦(東京ドーム)では佐々木朗希から2回に先制の右中間適時二塁打を放つと、4日の同戦でも7回一死二、三塁で同点に追いつく中前適時打。逆転勝利に大きく貢献した。この勢いで一塁のレギュラーを勝ち取るか。

完全復活を目指す大砲



過去3回打点王に輝いている勝負強さを常時、発揮したい

・中田翔
今季成績 40試合出場、打率.221、5本塁打、20打点、0盗塁

 中田は本来なら主軸で稼働しなければいけない。昨オフは肉体強化で110キロ前後まで20キロ増量。オープン戦で打率.325、3本塁打、8打点と好調を維持し、「五番・一塁」で開幕スタメンをつかんだが、打率.188、2本塁打、8打点と結果が出ずに首痛で抹消。5月10日に一軍復帰以降は、スイングの鋭さを取り戻しつつある。同月14日の中日戦(東京ドーム)では2試合連続弾となる逆転満塁アーチ。ガッツポーズで喜びを爆発させた。

 愛称「ダンプ」こと野球評論家の辻恭彦氏は週刊ベースボールのコラムで中田の満塁弾を振り返り、「打つ前に『こりゃ、あるぞ』と思ったんですよ。なぜか分かりますか。あいつは打席で少し伸び上がって重心を一度、ストンと下げるでしょ。今までは、そのとき力が下に抜けず、下半身が硬かったんですよ。そうすると体に余計な力が入って、反動というのかグリップもガッと硬くなる。それが二軍から帰ってきたら、ふっと尻から下に抜けるようになって、手の引きに余裕があって柔らかくなったんですよ。それで間ができて、『来た! 打つぞ』じゃなく、『来たね、はい、打つ』となった」と分析している。

 完全復活なるか。

勝負強さが光るベテラン



残り86本に迫った通算2000安打も大きなモチベーションになる

・中島宏之
今季成績 34試合出場、打率.224、1本塁打、17打点、0盗塁

「困ったときのナカジ」。勝負強い打撃で首脳陣から大きな信頼を寄せられているのがチーム最年長の中島だ。「代打の切り札」として相手バッテリーにとって脅威だが、中島本人はスタメンでまだまだやれる思いが強いだろう。

 今年は中田が一塁の開幕スタメンだったためベンチスタートだったが、2試合目のスタメン出場となった4月12日のDeNA戦(那覇)で4回に入江大生の145キロ直球を完璧にとらえ、中堅フェンス直撃の2点中越え適時二塁打。同月27日のDeNA戦(横浜)では4回一死満塁から坂本裕哉のチェンジアップを左中間に運ぶ1号満塁アーチ。39歳8カ月でグランドスラムは球団最年長記録だ。5月17日の広島戦(宇都宮)では1点差に迫った9回無死満塁から逆転サヨナラ適時打。巨人移籍後初のサヨナラ打に、「いい場面で回ってきたので、何とかヒーローになったろうと思ってやっていました」とお立ち台で笑みを浮かべた。

 大きなモチベーションもある。通算2000安打まで残り86本まで減らした。チームの勝利と大記録達成に向けて打ち続ける。

写真=BBM