毎月のように降格と昇格を繰り返し
パドレス時代の牧田
アンダースローは珍しい存在で、とりわけ100キロに満たないスローカーブは「フリスビーのようだ」と注目を浴びた。33歳のルーキーは開幕直前に「緊張とわくわくが混じって楽しみ。チームに貢献できるようにやるだけ」と、気持ちを込めていた。
デビュー戦は開幕2試合目。本拠地でのブリュワーズ戦だった。4対3と1点リードした5回二死一、三塁で登板した。右打ちの五番、ドミンゴ・サンタナと対戦し、遊ゴロに仕留めてピンチを切り抜けた。6回も続投。一死後、2021年に巨人に在籍したエリック・テームズに四球を与えたものの、次打者を遊ゴロ併殺。結局1回1/3を無失点と、上々のスタートを切った。
その後も中継ぎで登板したが、4月16日のドジャース戦で1回4失点、4月29日のメッツ戦で1回5失点と炎上して防御率が悪化。5月7日にはマイナーに降格した。6日後には故障者が出てメジャーに昇格するも、6月1日には再び降格となる。毎月のように降格と昇格を繰り返し、シーズンを通じてメジャーに定着することができなかった。
結局1年目はメジャーで27試合に登板して0勝1敗0セーブ。防御率5.40という不本意な成績に終わった。球威がない分、際どいコースを突いてボールカウントを悪くし、痛打される場面が目立った。アンダースローの宿命で、左打者には苦戦。右打者との対戦打率と出塁率が.211と.243だったのに対し、左打者には.274と.384であった。
2年目は一度もメジャーのマウンドに立つことなく、ずっとマイナー暮らし。11月には楽天と契約し、日本へ復帰することになった。アメリカの2年間でメジャーは1年目の27試合だけ。マイナーでは3Aと2Aで合わせて67試合、7勝4敗、防御率3.44だった。あこがれて踏んだアメリカの地で、厳しく貴重な経験を積んだ。
『週刊ベースボール』2022年6月6日号(5月25日発売)より
文=樋口浩一 写真=Getty Images