読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者は高校時代に甲子園で名を馳せ、プロ野球でもヤクルトで活躍、さらに西武、ヤクルト、日本ハムでも指導者経験のある荒木大輔氏だ。

Q.中日の根尾昂選手がシーズン中に野手から投手に本格転向しましたが、成功する可能性は高いでしょうか。(大阪府・匿名希望・28歳)



マウンド上の佇まいなども含めて、投手としての資質は十分に持っているように感じる

A.プロで打者を経験したことも大きなプラスになる

 大阪桐蔭高で2017年、18年のセンバツでは2年連続決勝戦のマウンドに上がり、胴上げ投手となっていた根尾昂選手。19年に中日にドラフト1位で入団したあとは遊撃手で勝負していましたが、なかなか芽が出ませんでした。昨秋、新監督となった立浪和義監督が秋季キャンプで根尾選手を外野にコンバートさせることを明言。外野一本のほうが出場機会は増えるという判断で、オープン戦では打率.304とアピールしましたが、シーズンに入るとベンチを温める機会が増えていました。

 その間にチーム状況も変化し、遊撃の京田陽太選手が打撃不振でレギュラーが白紙の状態になると、立浪監督は根尾選手を遊撃で再挑戦させることに。一方で投手への道も模索していました。春季キャンプ中にブルペンで投球練習させ、二軍で登板。5月21日の広島戦(マツダ広島)で9点ビハインドの8回に一軍のマウンドに上がり、15球ほぼ直球で最速150キロを計測するなど1回1安打無失点の好投を見せていました。そして交流戦後、本格的に投手へ転向することになりました。

 まだ高卒4年目ですから、もう少し野手で勝負してもいいのではないかと思いますが、ピッチングを見ていると、センスは十分に感じます。7月28日現在、11試合にリリーフ登板して、防御率1.93。ストレートは今季最速153キロをマークし、平均球速は149キロだそうですが、打者としっかり勝負できる強いボールでコントロールも悪くない。投手としての可能性は見受けられます。ただ、やはりそれだけではダメ。スライダーの威力もありますが、そのほかの変化球もしっかり操れるようにならないといけません。そのあたりはもっともっとレベルアップさせていく必要がありますね。

 プロで打者を経験していたことは大きなプラスになると思います。打者心理が分かるわけですから。この場面でこういうことをやられたら嫌だなと自分が感じていたことを、投手としてマウンド上でやっていけばいいわけです。内野手もやっていたので、フィールディングも問題ないでしょう。

 現在はビハインドでの登板となっています。将来的には勝利の方程式入りも望まれるところでしょうか。今のところ一軍で登板を重ねながら成長を促す形をとっていますが、今季いっぱいはファームで計画を立てて育て上げる方法もあるでしょう。特に中日のファームには現役時代、セットアッパーでMVPに輝いた浅尾拓也二軍投手コーチがいます。内情が分からないので何とも言えないところですが、中継ぎのスペシャリストの下でじっくりと育成していくのも一つのやり方かなと思いますね。

●荒木大輔(あらき・だいすけ)
1964年5月6日生まれ。東京都出身。早実から83年ドラフト1位でヤクルト入団。96年に横浜に移籍し、同年限りで引退。現役生活14年の通算成績は180試合登板、39勝49敗2セーブ、359奪三振、防御率4.80

『週刊ベースボール』2022年8月11日号(7月20日発売)より

写真=BBM