読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は捕手編。回答者は現役時代に強肩強打を誇り1982年の中日優勝時にはMVPに輝いた、元中日ほかの中尾孝義氏だ。

Q.「キャッチャーは審判を味方につけなきゃいけない」と言いますが、実際にはどのようにしたほうがいいのでしょう。(東京都・Uタロウ)



4月24日のオリックス─ロッテ戦[京セラドーム]。ボールのジャッジに不服そうな顔を見せたロッテの佐々木朗に詰め寄ろうとした白井球審[右]と間に入った松川捕手

A.普通にやればいいと思いますよ(笑)。それよりまずは球審のクセや傾向を早めにつかむことですね

 僕は現役時代、特別に「審判を味方にしよう」と思ってやっていたわけではありません。球審は普通にやっていれば普通にジャッジしてくれますし、こびたところでボール球をストライクにしてくれるわけじゃないですしね(笑)。ただ、怒らせちゃうと、ゾーンが狭くなってストライクを取ってくれなくなることがあるので、それは気をつけました。

 プロには、いろいろなタイプの審判がいますし、はっきり言えば、うまい、下手もあります。だからまず、その日の審判のクセや傾向を早めにつかむことを考えました。ストライクゾーンは審判によって違いがあるし、投手との相性やその試合ごとに、少しですが、変わる人もいます。しかも、1試合の中でゾーンが変わらない球審ならいいけど、人によってはイニングごとやカウントにより違ってくるタイプもいます。3ボール0ストライクならボール気味でも平気でストライクにしたりね。

 あと、試合の流れで、点差が開くとボール球でもゾーンが広くなる審判もいます。試合進行を早めるということかもしれないけど、あれはどうかと思いますね。勝ち負けに関係ないにしても、投手にしたら1球の失投が失点につながり、給料にも影響しますからね。

 最近思うのは、昔から比べると、ストライクゾーンが狭い審判が多いということです。審判というのは、誰もが自分は正しいと思っているんですけど、昔から自分がうまいと思っている審判ほど狭くなる傾向があります。そういう審判がカッとなりやすいのは、自分で「あ、ストライクでもよかったかな」と思った球をボールとジャッジし、それに対し文句を言われたときです。

 キャッチャーではありませんが、少し前、ロッテの佐々木朗希君と球審のトラブルが話題になりましたね。あれも同じような状況だったと思いますが、ジャッジに不服と言っても、佐々木君は大した動作はしていなかった。この若造め、とカッとしちゃったんでしょうけど、もう少し冷静になってほしかったですね。でも、あのときの松川(虎生)君はよかった。静かに審判を止めていましたが、2人でカッカしたらもっと大事になったかもしれない。いい度胸をしてます。とても高卒新人とは思えないですね。

 今はアウトセーフはビデオ判定がありますが、ストライク、ボールは抗議をしたところで覆りません。僕は、これはもう仕方ないこととして「あ、惜しかったな」くらいの気持ちでやっていました。ただ、ピッチャーが不服そうな様子をしていたときは、彼らが納得するように「どのくらい外れてますか」と聞き、「ボール半分ですね、分かりました」くらいの会話はしました。

●中尾孝義(なかお・たかよし)
1956年2月16日生まれ。兵庫出身。滝川高から専大、プリンスホテルを経て81年ドラフト1位で中日入団。89年に巨人、92年に西武に移籍し、93年現役引退。現役生活13年の通算成績は980試合出場、打率.263、109本塁打、335打点、45盗塁

『週刊ベースボール』2022年8月15日号(8月3日発売)より

写真=BBM