投手陣は12球団屈指の陣容



先発の青柳ら投手陣のコマは豊富だ

 今オフのFA市場は西武・森友哉、外崎修汰、楽天・浅村栄斗、広島・西川龍馬、阪神・西勇輝ら各球団の主力選手の動向が注目される。

 FA補強は戦力アップの手段として魅力的だが、獲得することで出場機会が減る選手が出てくるため、チームにとって必ずしもプラスアルファになるとは限らない。2004年に中日の新監督に就任した落合博満氏が就任会見で、1年目はトレードやFAで補強しないことを断言。「現有戦力で10パーセントの底上げをすれば必ず優勝できる」と宣言し、有言実行で同年に5年ぶりのリーグ優勝を飾った戦いぶりは多くの野球ファンの記憶に刻まれているだろう。

 当時の中日は強力投手陣と鉄壁のディフェンスで頂点に上り詰めたが、現在のチームで野球のスタイルが最も近いのが阪神ではないだろうか。

 先発陣にエース・青柳晃洋、西勇輝、伊藤将司、ジョー・ガンケル、復活した藤浪晋太郎、若手成長株の西純矢、才木浩人と力のある投手がズラリ。今年は1勝止まりだが、2ケタ勝利を3度マークしている秋山拓巳もファームに控えている。救援には今季ブレークした湯浅京己、浜地真澄、岩崎優、岩貞祐太、ラウル・アルカンタラ、島本浩也とさまざまなタイプの投手がそろい、守護神は150キロを超える直球とスプリット、スライダーで三振奪取率が高いカイル・ケラーが務める。投手陣は12球団屈指の陣容と言えるだろう。

 ただ、失策数はリーグワースト2位の73と多い。本拠地・甲子園が土のグラウンドで守備が難しいことを差し引かなければいけないが、守備のミスで投手陣の足を引っ張るケースが目立つ。得点もリーグ4位の426得点と貧打解消が長年の課題だが、20、21年と2年連続2位になったように地力があるチームであることは間違いない。

 今季は開幕戦から9連敗を喫するなど、春先はどん底で借金が16までふくらんだが、6月が14勝8敗1分け、7月が14勝6敗と大きく勝ち越して前半戦で借金を完済。8月は12勝14敗と足踏みして2位争いでもDeNAに離されたが、戦力で上位2球団に大きく見劣りするわけではない。

「守り勝つ野球」を突き詰めれば


 野球評論家の川口和久氏は週刊ベースボールのコラムで、以下のように持論をつづっている。

「監督が代わるとは言え、阪神の戦力は十分、来季の優勝候補と言える。今年、大きな出遅れはあったが、先発投手陣も次々若手が出てくるし、野手も近本光司、大山悠輔、佐藤輝明、中野拓夢がいて、ロハス・ジュニアが遅まきながら日本球界に完全にアジャストしている。その中で佐藤輝のセカンドというのがあった。一部からは批判されていたが、俺はいいんじゃないかと思う。今の野球では複数ポジションをこなせるプレーヤーは貴重だ。来季、外国人選手を2人打線に組み込むなら1人はファーストになるだろうから、大山をレフトかサードに回す必要が出てくる。その際、佐藤輝がライトだけじゃなく、セカンドを守れたらバリエーションが広がる。守備の不安を言う人もいるが、実戦経験は大きい。これから何度かセカンドを守らせることで、一定レベルまではいくんじゃないかと思う。そうなれば固定は無理でも投手との相性などで打線の選択肢も増える。阪神次期監督への最高のプレゼントになる可能性もあると思うんだが、どうだろう」

 スポーツ紙遊軍記者は「西武の森は関西出身で魅力的な選手ですが、捕手は梅野隆太郎、坂本誠志郎の体制で十分に戦える。阪神の課題は守備の精度を上げることに尽きると思います。投手陣は強力ですし、かつての落合中日のように現有戦力で『守り勝つ野球』を突き詰めれば、リーグ優勝できる力は持っている」と分析する。

 矢野燿大監督は今季限りで退任する意向を公表している。後任の監督が球団フロントと話し合い、どのようなチームを構築するか。FA市場に参戦するかも注目される。

写真=BBM