今季ヤンキースのGM25年目となったキャッシュマン。世界一に4回輝いているが、毎年世界一を求められるチームだけに評価が厳しい。契約最終年チームはどういう成績を残すだろうか

 ヤンキースのブライアン・キャッシュマンGM、55歳は1998年に現職に就き今季が25年目。その間一度も負け越したことがなく、プレーオフに出られなかったのも4回だけ。世界一に4度輝いている。普通のチームのGMなら「偉大」と称賛されてしかるべきだろう。

 しかしながら1903年の創設以来、27回の世界一に輝いたチームではそうはいかない。98年から2000年の3連覇は、前任者のジーン・マイケルとボブ・ワトソンが集めた選手によるものとされ、「キャッシュマンが作った優勝チームは09年だけ」と言われる。

 加えてビッグマーケットのニューヨークの球団で、資金力でほかを圧倒しているのに勝てないのはなぜとなる。そして今年は7月8日まで61勝23敗とシーズン118勝ペースで、ア・リーグ東地区2位に15.5ゲーム差をつけていたのだが、以後22勝31敗と失速。2位レイズに5ゲーム差に迫られた(現地時間9月8日時点)。

 今年は世界一になれるとヤンキースファンの期待が大きく膨らんでいただけに失望も大きい。そこで今年で契約が切れるGMに「もし勝てなければ、契約延長に値しない」という声が上がっている。批判の的なのがトレードデッドラインでの失敗。若手左腕ジョーダン・モンゴメリーをカージナルスに出して、守備の良いハリソン・ベイダー中堅手と交換したが、モンゴメリーはカージナルスで5勝0敗、防御率1.47の活躍。

 一方、ベイダーは右足底筋膜炎でまだプレーできていない。そしてアスレチックスの剛腕フランキー・モンタスを獲得したが1勝2敗、防御率5.87。交換でアスレチックスに移籍した左腕JP・シアーズは2勝1敗、防御率2.63である。

 ポストシーズンの短期決戦になれば先発に剛腕投手が必要であり、守備のうまい選手もほしい。トレード成立時に「10月に備えるためのもの。勝つための良い選択肢を首脳陣に与えたかった」と説明しており、考え方は間違っていなかったと思うのだが、その後ここまでチームが急降下してしまうとは予測できなかった。
 
 原因は打線。前半チームOPS(出塁率+長打率)は.776で30球団トップだったが、後半は.676の24位である。主砲アーロン・ジャッジ以外は沈黙している。これについては現場を預かるアーロン・ブーン監督の責任が重いと思うが、そもそも監督経験のないブーンを18年に抜擢したのはキャッシュマンなのである。

 キャッシュマンGMは球界で敬意を払われる存在だ。長年、名門球団を率いながら、偉ぶることなく、真っすぐで飾り気がない。そしてお金も使い放題ではなく、18年と21年にサラリー総額をぜいたく税の基準額以下に下げ、ペナルティの割合をセットし直したように、配慮している。

 アストロズのようにタンキングもせず、毎年優勝争いに絡み続けるのも大したものだ。とはいえヤンキースファンが求めるのは世界一という結果のみ。あの短気なジョージ・スタインブレナーが依然オーナーなら、とっくに解雇されていたかも。もし今季も世界一になれなければ、父親に比べれば相当辛抱強いハル・スタインブレナーがどんな決断を下すのか興味深い。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images