移籍1年目、プロ初本塁打の男



近鉄移籍1年目の2001年、劇的な一打を放った北川

 20世紀から21世紀に変わるタイミングのシーズンオフ。このときトレードで移籍したのは40人を超える。必ずしも成功するとは限らないのがトレードだが、一方で、なかなか大成功ともいかないのもトレードだ。この世紀をまたいだシーズンオフで、FAはヤクルトから中日へ移籍した川崎憲次郎の1件のみ。球界が騒然となるようなトレードもなかったが、ミレニアムの喧騒をよそに、どちらかといえば静かなストーブリーグが、ペナントレース閉幕に劇的な結末をもたらすとは誰も想像できなかったはずだ。

 3対3の大型トレードが2件あったのだが、そのうち1件でドラマが始まっていた。阪神と近鉄、ともに関西圏ながらリーグが異なる2球団のトレード。近鉄から阪神へ移籍したのは外野手の平下晃司、投手の酒井弘樹、同じく投手の面出哲志だった。一方、阪神から近鉄へ移ったのは投手の湯舟敏郎、同じく投手の山崎一玄、そして捕手の北川博敏だ。当時の近鉄には的山哲也や古久保健二、のち外野手に転向する礒部公一らがいて、捕手の層は盤石。阪神では不遇だった北川は、会見でも1人でニコニコ、「のびのびして気軽に野球ができました」と、まさに水を得た魚のように躍動していく。

 もともと打撃には定評があった北川。やはり現役時代は捕手だった梨田昌孝監督に認められ、4月にプロ7年目の初本塁打、5月には初サヨナラ打などバットで存在感を見せていく。このサヨナラ打は生まれて初めてだったといい、まさにメモリアルシーズンとなったわけだが、その程度では終わらなかった。近鉄は“いてまえ打線”の爆発で西武やダイエー(現在のソフトバンク)とリーグ優勝を争って、9月26日のオリックス戦(大阪ドーム)。3点ビハインドの9回裏、北川は代打に立つと、4球目を左翼席へ。移籍1年目、プロ初本塁打を放ったばかりの男が、プロ野球で初めての代打逆転サヨナラ満塁本塁打でリーグ優勝を決めた。

 北川は04年に打撃を生かすため一塁に転向、レギュラーに定着して、初めて全試合に出場。これが奇しくも、いや皮肉にも、近鉄のラストイヤーとなった。

文=犬企画マンホール 写真=BBM