ペナントレースも開幕から約2カ月が経過した。5月30日からはセ・パ交流戦がスタートするが、ここまでチームの勝利に欠かせないクローザーは各球団、しっかりとした働きを見せてきたのか。パ・リーグのクローザー事情を見ていこう。
※記録は5月29日現在

人的補償から飛躍



日本ハム・田中正義

日本ハム・田中正義

 開幕当初は昨季3年ぶりの復活を遂げた石川直也が抑えのポジションを任されたが、4月下旬に左内転筋付着部肉離れで離脱。オフに人的補償でチームに加わり、キャンプから猛アピールを続けて勝ちパターンの一角を担っていた田中正義に白羽の矢が立った。初のセーブシチュエーションとなった4月21日の楽天戦(楽天モバイル)では1点のリードを守り切れずに涙したものの、以降は155キロを超えるストレートで押しまくって必殺のフォークで仕留めるスタイルで、徐々にベンチからの信頼を高めている。眠り続けていた才能がついに開花しようとしている。

【2023年成績】
19試合1勝1敗7S6H、奪三振率11.00、防御率3.00

ベテラン、返り咲き



ロッテ・益田直也

ロッテ・益田直也

 開幕時点で吉井理人監督は「クローザーは固定しないで、そのとき調子の良い投手を臨機応変に起用する」と言っていたが、始まってみると今季から復帰した澤村拓一が防御率4点台という不安定さを露呈したこともあり、抑えとしての実績が十分な益田直也が最後に起用されることが最も多い。昨年終盤はR.オスナ(現ソフトバンク)にその座を譲った時期もあったが、また戻ってきた形だ。5月18日のオリックス戦では史上初の「ZOZOマリンで通算100セーブ」を達成し、通算200セーブ到達も目前。今季も、結局は益田がクローザーである。

【2023年成績】
19試合0勝0敗13S6H、奪三振率6.11、防御率1.02

繰り返される“お決まり”



ソフトバンク・R.オスナ

ソフトバンク・R.オスナ

 その名前がコールされた瞬間、球場の雰囲気は二分する。敵側からの絶望感と味方側からの安堵感。右腕が見せる圧巻の投球により、相対する感情は日に日に大きくなっている。昨季も途中加入したロッテで29試合、防御率0.91と好成績を残したが、新天地で迎えた今季もここまで無失点。ランナーを背負っても動じる様子はなく、当たり前のように後続を斬って取る。そして、指をさして天を仰ぐお決まりのポーズ。これが開幕から繰り返されている。「これからもチームのために、1試合1試合頑張っていくだけ」。右腕自身の思いも開幕から変わらない。

【2023年成績】
17試合0勝0敗11S5H、奪三振率7.94、防御率0.00

不動のクローザーが君臨



楽天・松井裕樹

楽天・松井裕樹

 史上最年少で通算200セーブを達成した楽天不動のクローザーは今季も盤石だ。開幕から好投を続け、チームは最下位ながらリーグ4位タイの7セーブ、防御率も0点台をキープしている。4月23日の日本ハム戦(楽天モバイル)では回またぎもいとわずサヨナラ勝利に貢献。厳しい場面やしびれる状況でも顔色一つ変えずに腕を振る姿は「頼もしい」の一言だ。5月24日のオリックス戦(ほっと神戸)こそサヨナラ弾を浴びたが、信頼が揺らぐことはない。セーブシチュエーションが増えればおのずと数字も上がってくるだろう。2年連続3度目のセーブ王はすでに視界に入っている。

【2023年成績】
15試合1勝1敗7S4H、奪三振率13.80、防御率0.60

復帰まで全員でカバー



オリックス・平野佳寿

オリックス・平野佳寿

 救援陣の厚みは年々増すも、中嶋聡監督はキャンプイン前にクローザー起用を明言。日米通算250セーブまで21に迫り、39歳のベテランは「僕がやらないとチームは上がっていかない。使命感を持ってシーズンに臨んでいきたい」の決意を明かし、西武との開幕戦(ベルーナ)で今季初セーブ。奪三振こそ少ないものの、絶妙な高さから落とすフォークに時折カーブも交えるなど、熟練の投球で冷静なマウンドさばきを続けてきた。だが、5月26日に8セーブ目を挙げた後、腰痛を発症して登録抹消。守護神の復帰まで‶日替わりクローザー″も視野に入れ全員でカバーする。

【2023年成績】
14試合0勝1敗8S3H、奪三振率4.85、防御率1.38

安定感を欠くベテラン右腕



西武・増田達至

西武・増田達至

 3月31日、開幕のオリックス戦(ベルーナ)、2対1と1点リードの9回、マウンドに上がったのは青山美夏人だった。新人右腕は森友哉に同点弾を浴びチームを勝利に導けなかったが、2日後の同カードでプロ初セーブをマーク。しかし、その後は本来の守護神である増田達至が試合の最後を締める役割に。ただ、2020年にセーブ王のタイトルを獲得したベテラン右腕の投球は安定しない。昨年、直球の平均球速は約147キロだったが、今季は約145キロにダウン。ここまで7セーブを挙げているが大量失点する試合もあり、防御率は6.39だ。背番号14は安定感を取り戻せるか。

【2023年成績】
13試合1勝1敗7S1H、奪三振率5.68、防御率6.39

写真=BBM