不気味な初陣校



母校を率いて9年目。鹿屋体育大・藤井監督は初出場での「8強以上」を目指している

 第72回全日本大学野球選手権大会は6月5日に神宮球場、東京ドームで開幕し、11日に神宮球場で決勝が行われる予定だ。

 26連盟から27代表校が出場。九州地区南部で初めて名乗りを上げたのは、国立大学の鹿屋体育大(鹿児島県鹿屋市)である。

「新しい風を吹かせる」

 同大学OBで、就任9年目の藤井雅文監督は意気込みを語った。

 広島県出身。井口高から体育教員を目指して進学した鹿屋体育大では、内野手として活躍した。当時の部員は23人。監督不在で、学生主体でチームを運営していた。藤井監督は主将を務め、ベンチではサインを出したという。

「チームは作れますが、学生の力だけでは限界があります。大人の指導者がいなければ社会人、プロへのつながりも持てない。大人の力がないと、マネジメントはできません」

 大学卒業後は中学校の教員を3年務めた後、母校・鹿屋体育大に戻った。非常勤として修士課程、博士課程を取りながら、監督として野球部を指導。正規の教員(体育学部講師)となって3年目である。学生時代に必要だと感じていた「大人の指導者」として、学生ために汗を流した。就任当初は卒業後に野球を続ける部員はほぼいなかったが、藤井監督がルートづくりに尽力。今年3月の卒業生は、7人が硬式野球を継続している。「目指すのが当たり前の空気になってきた」。チームとしても「(九州地区)南部ブロックで4度の準優勝。マインドセットが、全国へと向けられるようになった」と、1年ごとに成熟してきた。部員は79人に膨れあがり、活気が出ている。

 鹿屋体育大は1981年に創立され、野球部は84年創部。ついに全国大会の初切符を手にした。大会初日(6月5日)に高知工科大との1回戦(神宮)を控える。

「初出場なので、まずは1勝。私たちは、東京に勝負に来ている。出場するのが目標ではなく、いかに、この全日本選手権で勝つかを見据えて、取り組んできました。2、3勝したい」。2勝すれば8強、3勝すれば4強という目標設定をした意識の高さである。

 開会式で主将・原俊太(4年・済々黌高)は「全国の舞台でも自分たちの野球をして、魅力を発揮する」と決意表明した。不気味な初陣校である。常日ごろから文武両道を実践してきた、国立大学の挑戦から目が離せない。

文=岡本朋祐 写真=BBM