「偉大な先輩です」



青学大の3年生スラッガー・佐々木は富士大との全日本大学選手権準決勝の初回、逆方向に本塁打を放った

 1996年の全日本大学選手権を制したのは青学大である。一番・遊撃手の主将としてけん引したのが、井口資仁(元ロッテ監督)だった。記憶に残る弾道がある。九州共立大との決勝。2回に左中間、7回に右中間への一発。特に右方向への弾道は、圧巻だった。

 この27年前の動画を見ていたのが、青学大3年生・佐々木泰(県岐阜商高)である。

「YouTubeで井口さんの大学時代、プロの映像を視聴してきました。(ファンである)中日とロッテの日本シリーズ(2010年)では、よく打たれました(苦笑)。偉大な先輩です」

 富士大との全日本大学選手権準決勝(6月10日)。二番・三塁の佐々木は1回表一死から先制ソロを右翼席へ運んだ。「打った瞬間、完璧でした。右方向の本塁打は、公式戦ではなかったので、この舞台で打てたのは自信になる」。


青学大OBの井口氏が神宮のネット裏で観戦。1996年の全日本大学選手権では、主将として日本一へと導いた

 青学大は5対2で制し、決勝進出を決めた。過去に93年(優勝)、96年(優勝)、99年(優勝)、2005年(優勝)、06年(準優勝)と出場した5大会でいずれも決勝に駒を進めていた。「そこのプレッシャーはありました。勝ったのは大きい」。この日はあこがれの存在である井口氏が、神宮のネット裏で観戦していた。「井口さんの前で結果を残せて良かったです」。井口氏は同じ右スラッガーの後輩の打撃について「右方向にしっかりホームラン打ちましたんでね。まだまだ1年あるんで、いい準備して頑張ってほしいと思います」と目を細めた。

 井口氏の大学時代を彷彿とさせる放物線も、佐々木は「そんなまだ……。あこがれの気持ちしかありません」と恐縮した。青学大は17年ぶりの決勝進出。相手は明大である。

「東都と東京六大学の対決。六大学には、ライバル心がある。昨年は亜細亜大学が優勝しているので、東都の連覇を目指していきたい」

 明大は2回戦から3試合で失点0。対する青学大は2回戦から3戦連続2ケタ安打と打撃好調だ。「初回からガンガンいきたいです」。ファーストストライクを積極的に振り、攻め続けるフルスイングが青学大の持ち味。決勝の初回の攻防から、目が離せないところだ。

文=岡本朋祐 写真=矢野寿明