打撃3部門で上位



力強い打撃でチームをけん引している岡本和

 巨人の四番から侍ジャパンの四番へ――。主力打者が打撃不振や故障でスタメンを外れる中、チームで唯一全58試合に出場している岡本和真が四番にふさわしい活躍を見せている。打率.324、15本塁打、34打点。本塁打はリーグトップで、打率と打点も上位につける。

 今年の岡本和は好不調が少ない。状況によっては強引に長打を狙わず、「つなぐ打撃」でチャンスメークすることもあるが、勝負を決める一打もきっちり放つ。6月3日の日本ハム戦(東京ドーム)では守護神・大勢が1点リードの9回に登板して同点に追いつかれたが、四番が救った。2対2の延長10回無死一塁で玉井大翔の初球を左翼線にはじき返すサヨナラ適時二塁打。お立ち台で「ピッチャーが頑張ってくれていて、僕自身もチャンスで打てていなかったので最後に打てて良かったなと思います」と自身3度目のサヨナラ打を振り返った。

 10日のソフトバンク戦(PayPayドーム)では、2点リードの7回二死一塁で、甲斐野央の高めに浮いたフォークを左翼席に運ぶ15号2ラン。交流戦11試合で6本塁打と量産体制に入っている。

「頼りになる四番打者」


 大久保博元一軍打撃チーフコーチは週刊ベースボールのコラムで、岡本和の働きぶりを高く評価して言う。

「交流戦5割で行ければ、いやそれ以上でという思いで臨んでスタートしました。やはり初見の投手と対戦することが多くなります。そうなると能力対能力になることは多いです。その中で、いきなりパ・リーグ首位で交流戦を迎えたロッテとの対戦。実際に手強かったですし、パの首位争いをするチームだけあって、投手力も強力でした。ただその中で、2勝1敗と勝ち越すことができました。これは四番を打つ和真(岡本和真)の調子が上向いてきたこともあり、彼の打棒により勝ち越せたと思います。それは、6月3日の日本ハム戦(東京ドーム)でのサヨナラ二塁打も同じです。彼がここぞの場面で、持っている能力と集中力を発揮してくれたからこそです。やはり頼りになる四番打者だなと思います」

周囲から高まる評価


 2020、21年と2年連続本塁打、打点の2冠王を獲得。昨季は球団の生え抜きで史上3人目の5年連続30本塁打をマークした。今年は三冠王も十分に狙える。新生侍ジャパンでも中心選手になる可能性が高い。これまでWBC、五輪と国際舞台に縁がなかったが、今年3月のWBCで侍ジャパンに選出されると、本大会で輝きを放った。準々決勝・イタリア戦で3回に左越え3ランを放つなど5打点の大暴れ。決勝・アメリカ戦でも1点リードの4回に貴重な追加点となるソロを左中間スタンドに叩き込んだ。全7試合に出場して打率.333、2本塁打、7打点。優勝に大きく貢献する働きぶりに、試合を視察したメジャー関係者の評価は高かった。

「パワーだけでなく技術も兼ね備えたホームランバッター。初対戦の投手でもアジャストできる能力が高い。本塁打を打つ能力で言えば、鈴木誠也(カブス)より上だと思う。打撃だけでなく、守備能力が高いのもいい。一塁、三塁だけでなく外野も守れる。チームにとってありがたい選手だよ。WBCの活躍でスカウトの注目度が一気に上がった選手の1人だね」

 侍ジャパンは栗山英樹監督が退任を発表。次期監督は決まっていないが、注目されるのは四番に据える選手だ。稲葉篤紀前監督(現日本ハムGM)は鈴木を据え、東京五輪で打撃不振になったときも打順を変えなかった。栗山監督は村上宗隆(ヤクルト)を抜擢したが、1次ラウンドで打率.143と調子が上がらず、準々決勝のイタリア戦から吉田正尚(レッドソックス)を四番に変更した。岡本和は「六番・一塁」でスタメン起用されていたが、四番を打つ力は十分に持っている。次回のWBCは3年後の26年に開催予定。岡本和がどのような打者に進化していくか、楽しみだ。

写真=BBM