抑え切れない「感情」



高校日本代表でプレーする大阪桐蔭高・前田は練習中、リラックスした表情を見せた

 第31回WBSC U-18ベースボールワールドカップ(台湾、8月31日開幕)に出場する侍ジャパンU-18代表(高校日本代表)が8月27日、東京都内のグラウンドで練習を行った。

 28日には大学日本代表との壮行試合が東京ドーム(18時プレーボール)で行われる。27日には予告先発が発表された。高校日本代表は大阪桐蔭高の左腕・前田悠伍(3年)、大学日本代表は青学大の右腕・下村海翔(4年・九州国際大付高)が務める。

 昨年に続いて高校日本代表を指揮する馬淵史郎監督(明徳義塾高監督)は26日、大学生との練習試合後の取材対応で前田の先発起用の構想を明かしていた。背番号18。指揮官は大会前最後の実戦の場で、高校日本代表のエースにスターターを任せたのである。

「短いイニングになる。彼本来のピッチングができたらいい。『しゃかりきになって投げるな!』とは、言っています。スピードを考えずに投げてほしい」(馬淵監督)

 最速148キロの前田は、ボールのキレで勝負するタイプ。トップレベルの大学生が相手で大舞台・東京ドーム。馬淵監督は気負うことを想定して、クギを刺したわけだが、前田にしてみれば抑え切れない「感情」がある。

 2年春のセンバツで優勝し、同夏は8強。主将として臨んだ3年春のセンバツは4強。経験、実力とも「世代No.1」と言われてきた。しかし、今夏は履正社高との大阪大会決勝で無念の敗退。自身4季連続での甲子園出場を逃し、今大会にかける思いは並々ならぬものがある。夏の敗退から約1週間、滋賀県内の実家へ帰省したあとは、大阪桐蔭高の野球部寮に戻った。グラウンドで後輩とともに汗を流し、実戦練習でも登板を重ね、コンデションを上げて、東京入りしてきた。

教訓となった1球



8月28日の大学代表との壮行試合[東京ドーム]での予告先発が発表。27日はブルペンで約20球を投げ込み、調整は万全である

 25日、大学生との練習試合では1点をリードした最終回の7回裏から四番手で救援して、1回無失点で試合を締めた。タイブレークの練習となった8回表は一死二、三塁から3ランを浴びたが、この1球が教訓となった。

「甘いコースは持っていかれるので、投げミスをなくすのが課題です。悪い癖が出るので、体が前へ突っ込まないように……。この2日間でバランス良く投げることを意識し、投げたいところに投げ切れている。むしろ、シーズン中(大阪大会まで)よりも良い状態です」

 登板前日の27日はブルペンで約20球を投げた。練習後の取材対応で、意気込みを語った。

「目上が相手で(気持ちが)引くところがあるかもしれないですが、自分は強気のピッチングが売り。一球一球に気持ちを込めて、大学生を上回っていきたいです」

 前田は甲子園、明治神宮大会、国体でいずれも優勝を経験。高校球児として味わえる、すべての全国大会のマウンドを踏んできた。百戦錬磨の左腕であり、緊張感の中にも楽しむ術を心得ている。頼もしい発言が聞かれた。

「過去に東京ドームで観戦したことはありますが、プレーするのは初めてです。スタンドからの景色とは違うので、心に刻みたい。お客さんもいっぱい入ると思いますので、空気を楽しんで投げていきたいです」

 高い技術に加えて、精神面が強く、やはり並の高校生ではない。壮行試合には多くのNPBスカウトの視察が予定されている。10月26日のドラフトでの「1位指名」を目指す前田にとって、国内最後のアピールの場となる。

文=岡本朋祐 写真=菅原淳