主将の人間性は抜群



星稜高の主将・芦硲が明治神宮大会準決勝[対豊川高]の4回表に2ラン。この試合は4安打6打点と決勝進出に貢献した[写真=田中慎一郎]

[明治神宮大会高校の部・準決勝]
11月19日(神宮)
星稜(北信越/石川)15-3豊川(東海/愛知)※5回コールド

 名門校をけん引する重圧は、経験した者にしか分からない。星稜高の主将・芦硲晃太(2年)は北信越大会2試合で、8打数無安打だった。体調不良のため、1回戦と準々決勝を欠場。準決勝から復帰したが、本来の姿を見せることができなった。

 野球は団体競技。星稜高には、伝統として「耐えて勝つ」というモットーがある。チームリーダーとして、下を向くわけにはいかない。ミスを全員でカバーする。チーム力で北信越大会を制し、来春のセンバツ出場を当確とさせ、4年ぶりに明治神宮大会に出場した。主将・芦硲は重圧から解放され、東京ではノビノビとしたプレーを披露。三番・中堅で先発した広陵高との1回戦、青森山田高との2回戦でともに1安打を放ち、復調傾向にあった。

 そして、豊川高との準決勝では5打数4安打6打点。第1打席から二塁打、安打、安打、本塁打。サイクル安打がかかった第5打席では一ゴロも、5回コールド勝利に貢献した。新チーム以降、四番に据えたこともあったが、山下智将監督は「初回に打席に立つと、情報伝達も活発になる」と三番に固定している。

「(今大会は)表情良くやってくれている。余裕が出てきて、自分の野球のことも考えられるようになったのでは。北信越大会までは、主将の責任があったかもしれません」

 星稜高は今夏の甲子園に出場したが、創成館高(長崎)との初戦(2回戦)で敗退した。背番号13の芦硲は代打出場で三振だった。

「負けた晩、芦硲が『新チームのキャプテンをやりたい』と言ってきたんです。こういうチームをつくりたい、と。部長時代からほとんどないことでしたので、驚きでした。『そのつもりでいる』という話をして後日、彼に託しました。人間性? 抜群です。彼がよく引っ張ってくれている」

3度目の優勝にも欲はない


 作新学院高(栃木)との5年ぶりの決勝へ進出。星稜高は主将・松井秀喜氏(元巨人ほか)を擁した1991年以来、3度目の優勝へ王手をかけたが、山下監督に欲はない。

「当初から一戦一戦、学んで帰ろうと言ってきました。彼らなりに勉強をさせていただいて、成長する場として、もう1試合できる喜びがある。特別な思いはなく、春、夏と続く中で、勉強する試合にしていきたい」

 作新学院高・小針崇宏監督とは、開幕前の監督会議で挨拶を交わしたという。「甲子園塾で、父とは面識があったようで、楽しみです」。山下監督の父は、元星稜監督の山下智茂氏で甲子園塾の塾長だ。過去2回の優勝へ導いており、指揮官として「親子V」がかかっている。

「(父のことは)あまり意識していません。話もしていませんし……(苦笑)。ただ、星稜としての伝統あるので、歴代続いていることを大事にしています」

 練習拠点の専用グラウンドのネット裏に掲げてあるのは「全国制覇 人間性も野球も日本一を目指す」。星稜高はブレることなく、前へと突き進むだけだ。

文=岡本朋祐