勝敗以上に得た収穫



試合後、健闘をたたえ合った中京大中京高・高橋監督[左]と東邦高・山田監督[右]。今後も刺激をし合うライバルだ[写真=BBM]

[創立100周年記念 オール中京・オール東邦 野球大会]
11月23日(バンテリンドーム)
中京大中京6−0東邦

 夏の全国選手権大会最多優勝校は中京大中京高の7度(大会最多78勝)、春のセンバツ最多優勝校は東邦高の5度(大会最多58勝)。高校野球界をけん引してきた、愛知の名門2校の学校創立はともに1923年である。

 創立100周年記念行事として11月23日「オール中京・オール東邦 野球大会」がバンテリンドームにて行われた。午前10時から大学・社会人でプレーする卒業生で編成したOB戦が開催(中京OBが6対3で東邦OBに勝利)。午後に行われた現役戦では中京大中京高が6対0で東邦高を下した。

 試合前には両校主将による選手宣誓があった。

「私たちは今、創立100周年の伝統と歴史の上に立っています。この歴史と伝統がつながってきた両校の偉大な先輩方を誇りに思い、今日、この素晴らしい舞台でプレーできることを幸せに思います。今日という記念すべき1日は、野球を愛する皆さん全員で、全力で楽しみましょう。新たな100年の出発点として。日ごろから応援してくださる方に感謝し、仲間とともにベストを尽くすことを誓います」(中京大中京高のゲームキャプテン・杉浦正悦主将)

「私たち選手一同はスポーツマンシップにのっとり、両校100周年という素晴らしい記念すべき年に、このような素晴らしい球場で野球ができることに感謝し、両校100周年という素晴らしい伝統を引き継ぎ、新たな未来の第1歩として、この試合を最後まで全力で戦い抜くことを、ここに誓います」(東邦高・高柳大治主将)


現役戦の試合前には両校主将が選手宣誓した[左は東邦高・高柳主将、右は中京大中京高・杉浦主将]

 中日の本拠地・バンテリンドームが舞台。両校の応援席ではブラスバンド、チアリーダーによる応援活動。公式戦同様の緊張感ある雰囲気に、選手たちは勝敗以上の収穫を得た。

 中京大中京高はこの秋、県大会3回戦で敗退。21年春を最後に甲子園から遠ざかっている。高橋源一郎監督は言う。

「東邦さんのユニフォームを見ると、自然と奮い立つ。昨日、OB戦のメンバーを中心とした懇親会があったんですが、親睦を深めながらもライバル心が見えてくる。東邦さんからエネルギーをいただきました。生徒たちも、午前中のOB戦で感じるものがあったと思います。これから一冬を越えていく意味でも、良い1日でした。夏につながる。選手たちには『あの目を忘れるな』と言いました」

 東邦高は今秋、県大会準々決勝敗退。今春のセンバツで初めて母校を甲子園へ導いた山田祐輔監督は言う。

「学園の歴史と伝統をあらためて実感するとともに、素晴らしい機会をいただき、感謝しております。いつもとは違う緊張感の中で、試合は何もできませんでしたが、中京さんは良いチーム。来年の夏には必ず、手ごわいチームに仕上げてくるはずです。私たちは先を見るよりもまずは足元を見て、課題を克服しながら、試合に向かうまでの準備の部分を突き詰めていきたいと思います」

記念試合の総括


 閉会式では両校野球部の代表者が、お礼のあいさつ。

 中京大中京高でチームキャプテンを務める佐古響次朗(2年)は、来夏の愛知大会で東邦と甲子園出場を争った先に「深紅の大優勝旗を、愛知に持ち帰ります」と宣言。冒頭から東邦高と中京大中京高が愛知県の高校野球をけん引する背景を説明し、歴代先輩へのリスペクト、未来への新たな歩み。理路整然としたスピーチで、記念試合の最後を締めた。

 午前のOB戦で東邦OBチームを指揮した森田泰弘監督(東邦高前監督、東邦学園野球部総監督)に、記念試合を総括してもらった。

「開会式で理事長(榊直樹氏)があいさつしていましたが、野球が学園をリードし、野球によって学園が成り立ってきた。学園の軸は野球。あらためて学園の同窓生にアピールする機会になったと思います。OB戦と現役戦の合間には子どもたちよるキャッチボールイベントが行われましたが、野球人口が減少している昨今、こうしたイベントがやれたことは『野球っていいな』と、少しでも開催の意義があったのではないかと思います」

 この日の記念試合は両校の生徒会、放送部、硬式野球部マネジャーが、大会運営の中枢を担った。野球部をきっかけにして、双方の学園関係者、生徒、OB・OGが交流する場となった。競技スポーツにおいてライバルがいなければ、最強の相手がいなければ、成長することはできない。野球から何を学べるか。学校生活、社会生活にも置き換えることができる、人のために動く「チームプレー」である。中京大中京高と東邦高はこれからの100年も、野球が学園のシンボルであり続ける。

文=岡本朋祐