12月23日から29日の期間、都内で開催される「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」。高校バスケット界で最も注目の集まる“冬の祭典”に向け、バスケットボールキングでは大会の注目チームをピックアップした。

◆ディフェンディングチャンピオンとして臨む冬、一番の敵は自分自身か

 昨年のウインターカップでは圧巻の強さでトーナメントを勝ちあがり、新チームになってからもインターハイ優勝まで無敗をキープした福岡第一高校。現在人気、実力ともに高校バスケ界をけん引する存在だ。11月30日に行われた「第95回天皇杯・第86回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会」では、千葉ジェッツ相手に奮闘した姿も記憶に新しい。

 日々の練習で磨かれたディフェンス力と走力を武器に、相手をあっという間に置き去りにするファストブレイクは見るものを魅了。時より見せるゾーンプレスも破壊力抜群で、拮抗した展開からでも、いざスイッチを入れれば一気に勝負を決めてしまうその“速さ”は、間違いなく今の高校バスケ界で最も際立っている。

 チームの中心にいるのがガードコンビの小川麻斗と河村勇輝、ゴール下に君臨するクベマジョセフ・スティーブ(いずれも3年)という昨年から主力を担う不動の3本柱。小川と河村は、持ち前のスピードとテクニックでドライブ、アシストから得点を演出し、アウトサイドのシュート力もある。「2人とも度胸があって勝負強い」と井手口孝コーチも評価しており、“ダブルキャプテン”としてコート内外でリーダーシップを発揮する。

 豪快なダンクよりもディフェンスやリバウンドの献身的なプレーを優先するスティーブは、試合を重ねるごとに安定感が増してきている印象だ。そして、脇を固める神田壮一朗と内尾総理(ともに3年)も「周りに頼らずもっと自分から積極的に」と口をそろえ、主力として臨む初の冬舞台に標準を合わせる。

電光石火の速攻は、司令塔の河村(中)がスイッチを入れる[写真]=佐々木啓次

 ベンチメンバーも侮ってはいけない。シックスマンにはU18日本代表候補メンバーに名を連ねるフォワードの仲田泰利、3ポイントシューターの山田真史(ともに3年)らが控えており、「インターハイ後はブレイクとディフェンスでもっと貢献するために脚力を強化しました」(山田)と、当然レベルアップしている。また、秋の国体で福岡県の優勝に貢献したハーパー・ジャン・ローレンス・ジュニア、キエキエトピー・アリの2年生コンビの成長も著しい。

 前述のとおり、今夏のインターハイで優勝するまでは無敗を誇った福岡第一。だが、10月に新潟県で行われた交歓大会ではインターハイでも競り合った東山高校(京都府)に59−76で敗れ、今シーズン初黒星を喫した。11月2日の福岡大学附属大濠高校とのウインターカップ福岡県予選決勝では第3クォーター終了時点で21点リードしたものの、最後は1ケタ点差まで追いあげられ、夏以降は「もろさが見えた」(井手口コーチ)試合があったことも事実だ。

「昨年のウインターカップでああいう勝ち方をして、今年のインターハイ決勝でも圧勝したので(107−59)、チームとしては同じような勝ち方をしないとダメなのかなと思ったりもします。ですが、そう上手くいかないのがバスケットです。最後に1点でもいいから上回って優勝で終わりたいですね」

 井手口コーチは、そう大会連覇へ向けて口にしながらも、白い歯を見せて自信をのぞかせる。「一番の課題は本番までにケガや病気をしないこと。その状態で決勝のコートに立ってくれれば、きっと優勝できると思っています」

 ディフェンディングチャンピオンとして迎えるウインターカップ。選手たちは多かれ少なかれプレッシャーを感じることになるだろうが、昨年から2つの全国大会のトーナメントを勝ち抜いた“経験”は、何にも代えがたい自信になることは間違いないだろう。

昨年から主力を務める河村、スティーブ、小川(左から)[写真]=佐々木啓次

◆小川麻斗「自分がやらないといけない」

得点力のある小川はジャンプシュートやドライブだけでなく、アシストにも力を入れてより守りづらい選手へと変貌を遂げた。試合中はもう1人のキャプテン・河村にリードを任せることが多いが、練習から先頭に立ってチームを引っ張っている精神的支柱だ。

「インターハイは前の年に初戦敗退を味わっていたので、正直、初戦から難しかったです。個人的にはもっといいプレーができたと思いますし、2回戦以降も自分たちが手を抜いたら負けるというチームとの4試合だったので、決して楽ではなかったです。インターハイが終わってからは、シュート確率を上げることやアシスト面でレベルアップできた部分はあります。だけど、(10月の胎内カップで)東山に負けたことで他のチームと差を埋められたとも思っています。ウインターカップも自分たちが手を抜けば負けてしまうので、初戦から勢いをつけて日本一になりたいです。河村の負担をいかに減らせるかも大事になってくるので『自分がやらないといけない』と燃えています。

◆河村勇輝「王者なので情けない試合はできない」

福岡第一を象徴する絶対的司令塔。圧倒的なスピードと相手を欺くノールックパスは、これまで何度も観客の度肝を抜いてきた。最上級生となった今年はシュートレンジも広がり、隙きがあれば迷いなく長距離砲を撃ち抜く。

「インターハイは自分がチームを引っ張って優勝したわけではなく、チームメートに助けてもらっての優勝でした。ウインターカップはもっと自分が引っ張っていく意識を持ってチームの勝利に貢献できるガードになりたいですし、夏以降はいろんなウェイトトレーニングを試せる有意義な時間を過ごせたので、ベストなコンディションで臨めると思います。王者なので情けない試合はできないです。1試合1試合、1分1秒しっかり緊張感を持って、最後の決勝のブザーが鳴るまで気を緩めずにやっていきたいです。自分たちのバスケットをとおして、いろんな人たちに感動を与えられるようにしたいと思います」

◆クベマジョセフ・スティーブ「準決勝は東山にリベンジしたい」

泥臭いプレーもいとわない献身性が光るスティーブは、積極的に仲間を鼓舞する場面も増えた。高さを活かしたブロックショットも魅力で、攻守において大黒柱的存在を担う。

「インターハイは優勝できて嬉しかったです。僕の課題はミドルシュートで、夏が終わってからもずっと練習してきましたし、今では確率も良くなってきていると思います。ウインターカップは最後の大会です。準決勝は東山と戦ってリベンジしたいですし、絶対に勝てる自信があります。連覇できるようにオフェンスとディフェンス、ルーズボールとかリバウンドも頑張ります」

インターハイ優勝を経験したことで、より自信をつけた神田と内尾(左から)[写真]=佐々木啓次

◆神田壮一郎「もう一度自分たちのバスケットで優勝を」

機動力に優れ、内尾とともに今年から先発に名を連ねる神田。3ポイントもコンスタントに沈め、「積極的に攻めることを意識しているので、そこをウインターカップで出せればいい」と意気込む。

「自分たちが入学してからは初めてインターハイで優勝したので、すごく新鮮でしたし、決勝であれだけ差をつけて勝てたことは自分たちがやってきたバスケットは間違いじゃなかったと思えました。その時はウインターカップも絶対2連覇できると思いましたけど、10月のカップ戦で東山に負けて、このままじゃダメなんだなと気付かされました。自分たちは決して上手いわけではなく、『どれだけ練習をやっているか』が一番の自信になります。あそこで負けてからチームの雰囲気もすごく良くなりましたし、もう一度自分たちのバスケットで優勝して、いい形で3年間を終われるようにしたいです」

◆内尾総理「チームを勢いづけて優勝に貢献したい」

スモールフォワードの内尾は、これまで数々の相手エースとマッチアップしてきた。そのためディフェンス力は試合を重ねるごとに鍛えられ、“エースキラー”の名にふさわしい選手へ成長した。

「自分は今年からスタメンに入らせてもらったので、去年のウインターカップはあまりプレータイムがありませんでした。(去年は)優勝させてもらったという感じが強かったですけど、今年のインターハイは少し貢献できたかなと思っています。インターハイ後はアウトサイドからアグレッシブに攻めることや、臨機応変にプレーすることを意識して練習してきました。だけど、自分が一番求められているのはディフェンスの部分。点を取れる選手はたくさんいるので、ウインターカップではチームを勢いづけるディフェンスやルーズボール、リバウンドを意識して優勝に貢献したいです」

取材・文=小沼克年