埼玉栄高校(埼玉県)が全国大会の舞台に立つのは、2010年以来7年ぶりだった。古くは折茂武彦(レバンガ北海道)などを輩出する名門校だが、近年は地区大会でも勝てないチームになっていた。しかし、上尾市立大石中学校で全国優勝の経験を持つ伊藤裕一コーチが、就任2年4カ月でチームを全国大会に導いた。「全国に出るにはまだ時間がかかると思っていたけれど、選手たちががんばって勝ちあがってくれました」と笑った。

 伊藤監督と同時に入学した3年生たちは、“新生”埼玉栄のいわば1期生。指揮官が目指す「世界基準のバスケットボール」を必死に体現しつつ、新たな伝統を作ってきた。代表的なものが、練習後に3年生が行うミーティングと、総勢70人の部員が織りなす応援。「自分たちの代で応援歌もすごく増えたし、応援ならどこにも負けない自信があります」とキャプテンの廿楽港大は胸を張った。

 選手たちにとって初めての全国大会は苦いものとなった。県予選でエースの田中志門が肩を脱臼し、今大会も欠場。エースを欠いたチームは本来の戦い方を発揮できないまま、九州学院高校(熊本県)に63−84と大敗した。廿楽は「場慣れしていないこともあって、普段そんなにないようなミスが出てしまいました。本来の栄のバスケができなかったのが一番悔しいです」と振り返った。

 全国大会出場という大きな目標を達成したチームは、新たなステップへと進む。「今までは勝ちあがるために、彼らに合わせて妥協してきた部分もあります。選手たちには『ここからは全国に当たり前に出るチームと同じように、ラインを少し上げてやっていくよ』と伝えました」と、伊藤コーチ。

 今年の3年生はスポーツ推薦でなく一般入試で入学した選手ばかり。「でも、自分たちの代ががんばることとで、これから栄が全国の常連校になったらうれしいです」と、もう1人のキャプテン、井上大晟は話す。

 出場枠が1に絞られる全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会(ウインターカップ)予選で、1期生たちはどのような意地を見せられるか。

文=青木美帆