バスケットボールキングでは、BリーグやWリーグの選手たちに、高校時代を振り返ってもらうインタビュー特集を連載中。トップリーグで活躍する選手たちの高校時代の話を、ぜひ今後の学生生活の参考にしてほしい。

 第6回はトヨタ紡織サンシャインラビッツの東藤なな子が登場。昨シーズンは新人王に輝き、日本代表候補にも選出された19歳が語る高校時代とは。名門・札幌山の手高校時代で学んだことや思い出を全3回のインタビューで振り返る。

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インタビュー・文=田島早苗

――3年生のインターハイはベスト8。次は冬の全国大会に向けて臨んでいた中でウインターカップ北海道予選で敗退します。東藤選手は、U18女子アジア選手権と日程が重なったことで予選に出場できませんでした。
東藤 なんだかんだいって勝ってくれるだろう、(コーチの)上島(正光)さんもいるしと思っていたので、そんなには心配はしていなかったんです。それより『私は私のやれることをやろう』と思って日本代表の大会に臨みました。だから結果を聞いた時はびっくりしました。

――結果を聞いたのは大会中ですか?
東藤 U18女子アジア選手権の決勝で負けて、その翌日の朝です。インド開催だったのですが、朝起きて携帯を見たら負けたという連絡が来ていて。「え、引退?」って思いました。

 あの時はU18の大会でも決勝で負けて銀メダル。その時になんか嫌な感じがあったんです。

――ウインターカップに出られないという実感がわかなかったのでは。
東藤 そうですね。実際に試合をして負けたのなら、(高校バスケ)引退という実感はあったかもしれないです。でも、LINEの文字で知っての引退だったので、ショックというよりは信じられなくて。

 後は、チームのみんなが私に対して罪悪感のようなものを持っていたらと思うと…。みんなの気持ちを考えると悲しかったですね。

――結果を知った日が日本への帰国の日。北海道に着くまで様々な思いを巡らせたのではないですか。
東藤 目をつぶったら涙が出てくるから、飛行機の中でもずっと目を開けていました。

――北海道に帰ってからも気持ちが戻るまでには時間かかったのでは。
東藤 私はそんなにはかからなかったです。周りの方が引きずっていたので、「大丈夫だよ」と声を掛けました。

――ウインターカップ開催中は?
東藤 見に行きました。見たのは1試合だけ。梅木(千夏/現アイシン・エィ・ダブリュウィングス)のいた聖カタリナ学園高校(愛媛)の試合を見ました。

――その梅木選手を含め、U18のメンバーは仲が良いと聞きました。
東藤 すごく仲が良かったですね。一緒にバスケットしていても楽しいし、普通の生活でも楽しかったです。ウインターカップ予選に負けたことを知った時も、朝食会場でみんなに「引退した」と言ったのですが、「なな子、大丈夫だよ」とか「なな子の分も頑張るね」と声を掛けてくれました。

――できることならU18の時のメンバーでまた試合をしたい?
東藤 U20の大会とかほしいです(笑)。また一緒にやりたいですね。

――札幌山の手高校で上島コーチから、「これを一番教わった」というものはありますか?
東藤 技術はたくさん教わりましたし、メンタル面も。粘ることは一番強く言わて、一番身に付いたことだと思います。

 上島さんの指導はすごく細かいんです。だから一瞬でもさぼることはできなかった。何に対しても指摘やアドバイスが飛んでくる。細部の細部までこだわっている感じでした。

――その細かい動きが、今身に付いているという実感は?
東藤 トヨタ紡織で練習をしていても、プレーの一つ一つに、「このプレーだったらこことここを意識する」というのがインプットされているので自然とできているところはあります。それは高校で身に付けたことが生きているのだと感じます。

――Wリーグには多くの札幌山の手高校の先輩たちがいます。
東藤 先輩たちは憧れの存在です。昨シーズン、実際に対戦をしてみて、そのすごさを体感したというか、刺激を受けることが多かったです。

 私は本川さん(紗奈生/2020-21シーズンよりデンソーアイリス)を憧れのプレーヤーとして今までやってきたので、実際に対戦してスピードもそうですが、気持ちの強さ。リングに向かう強い気持ちを感じました。それとドライブはやっぱり一番すごいと思いましたね。昨シーズンは、憧れの先輩たちとプレー出来て、それを楽しんでいたところもありました。

――本川選手や町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)選手は高校で3冠を獲得した世代です。
東藤 当時の私は小学生で、優勝したことなどはテレビのニュースで見ていました。

――今の高校生にアドバイスを送るとしたら。
東藤 どんなに辛くてもバスケットを楽しむこと。楽しさがないと頑張れないし、リラックスしてやることもできないと思います。

 楽しむことは大前提として、あとは自信を持つことも。楽しむことと自信を持つことは高校最後の1年間で私自身もすごく大事にしていたことで、そこでバスケットに対する気持ちも変わりました。

――自信を持つというのは
東藤 プレー中は不安なことは何も考えずに、「自分はこれだけやってきたから大丈夫」とか、「あれだけ練習したんだから」と、心に余裕を持つことです。私はそういう時の方がいいプレーができました。

――高校時代の話はここで終わりますが、新人王のタイトルを獲得した昨シーズンの話も少し聞かせてください。
東藤 昨シーズンは得点ランキングで8位に入っていたので、そういった面で貢献できたことはうれしかったです。同じチームの齋藤麻未さんも活躍していたし、新人王は特に狙ってはいなくて、獲れたらうれしいなぐらい。それよりはチームのベスト4に向けて自分ができる役割を全うしようと思っていました。

――1年目を終えて手応えを感じたのでは
東藤 高校だと同じチームと何度も対戦するということは少ないのでアジャストもあまりないし、相手がどんなチームか良く分かってない上で試合をすることもあります。だけどWリーグは、相手のプレースタイルやセットプレー、マークマンのプレーの特長などを知った上で戦う。戦術や頭を使うことが必要で、試合をしながら駆け引きをすることもあります。それこそ私たちもアジャストするけど相手もアジャストする。そういう中での“やり合い”がすごく楽しかったです。

――Wリーグの“壁”は感じましたか?
東藤 途中で壁を感じたのですが、それを乗り越えてからの手応えの方が大きいですね。

――シーズン中に壁を乗り越えた?
東藤 昨シーズンは、12月末頃に自分のプレーに対して伸び悩んだことがあって。その時期はいろんなことを考えましたが、それを乗り越えてから、強くなった感じはあります。

――初めてのオフシーズン、コロナウイルス感染症の影響で思うように活動は出来なかったと思いますが、どのように時間を活用していましたか?
東藤 NBAや男子選手のプレーは普段から見ていますが、さらに見るようにはしていました。あとは本を読んだら考え方変わると聞くじゃないですか、なので選手というよりは人としてしっかりした考えを持てるように、本をたくさん読みました。

――今回はありがとうございました。2シーズン目の活躍も期待しています。

 

PROFILE
東藤なな子(とうどう・ななこ)トヨタ紡織サンシャインラビッツ
札幌山の手高校時代は下級生の頃から主軸を担い活躍。力強いドライブやミドルシュートなどを主体に得点を奪う点取り屋で、さらにリバウンドやディフェンスでも貢献する。ルーキーイヤーとなった昨シーズンの第21回Wリーグでは見事、新人賞を獲得。日本代表ではU18、U19女子日本代表として国際大会を経験し、昨年は自身初となるトップチームの日本代表候補にも選出された。